施策・事業評価に注文も 市総合計画審議会で各種実績値確認 産業振興、スポーツ分野などで議論

▲ これまでの成果指標評価のあり方などを巡り意見交換

 大船渡市総合計画審議会(会長・米谷春夫大船渡商工会議所会頭、委員20人)は22日、市役所で開かれた。本年度まで5年間を期間とする市総合計画前期基本計画の進捗状況では、市当局が示した成果指標や評価を巡り意見を交わした。施策目標への評価では「A(十分に達成できている)」「B(ほぼ達成できている)」が24施策中計22項目と9割を超える一方、委員からは実情に合った成果指標設定や産業振興施策のあり方、スポーツ分野の評価などで意見、注文が寄せられた。(佐藤 壮)

 

 同審議会は、総合計画の調査・審議に向けた市長の諮問機関。本年度は8~12年度を期間とする後期基本計画策定に向けて議論を重ねる。学識経験者や民間団体、各種団体などの代表者ら20人で構成し、現任期では今年6月以来2回目の開催となり、委員14人が出席した。
 この日は3~7年度を期間とする前期基本計画の進捗状況を議論。市側は24施策の評価をまとめ、A評価は5施策、B評価は17施策、C評価(あまり達成できていない)は2施策となっている。
 各施策ごとに成果指標に基づく実績値と達成率も明記している。議論では主に、成果指標の設定のあり方や、重視すべき施策の方向性などについて意見が交わされた。
 B評価の「雇用の創出と安定」に関しては、地域で安心して働くことができる成果指標に、有効求人倍率を用いている。委員から「高い給料で働けて暮らしやすいことが大事ではないか。所得の分布状況や非正規労働者の割合など、実質的な中身が大事ではないか」との指摘が出た。
 市側は「地域で安心して働けるということに特化している。意見を踏まえ、次期計画の目標設定のあり方を検討したい」と述べた。
 産業振興に関しては「安定した雇用を生み出すには、地元の大きな企業の力が重要。企業の誘致や創業支援に力を入れる事業が多いが、大船渡の強みを伸ばすようにすべきでは」との指摘も。一方で「個人事業主や商店街、東日本大震災以降にできた小さなお店の方々にも気持ちを寄せるべき。最低賃金上昇などで苦しんで、撤退や閉店の動きも見られる。両方が元気になれる施策を」といった発言も出た。
 このほか「市の基幹産業であり、製造品出荷額で大きな割合を占めるセメントをはじめとした窯業振興も計画に盛り込み、評価すべきではないか。道路のコンクリート舗装の推進を協力するといった事例もある」といった発言も。別の委員も「堂々と行政が支援するというのは重要。輸出支援や排熱の利活用など、さまざまな生かし方があるのではないか」と同調した。
 また、生涯スポーツ振興の基本事業では、市民意識調査で「スポーツ・レクリエーション施設が利用しやすい」と答えた割合目標が23%なのに対し、6年度調査は24%だったことから達成率は「100%超」との評価が示された。委員から「4分の1が評価していることで良しとするのには疑問は残る」との指摘があり、市側もさらに高い目標設定の必要性を示しながら、次計画の検討に反映させる姿勢を示した。
 このほか、7月下旬の津波警報・注意報に伴い避難所が開設された際の備蓄品の不足状況が話題に。水産業分野の課題でも意見が交わされた。
 後期基本計画の施策体系・構成案に関しては、24施策からなる現体系を継承する方針が示された。現行の「結婚支援と子ども・子育て支援の充実」も継承するが、名称は「子ども・子育て支援の充実」と変更。「結婚」に関する記述は、ライフスタイルや価値観の多様性を尊重する理念にそぐわないという判断から、削除することにしている。
 社会環境の変化や、大規模林野火災など大きな影響を及ぼす特定事項は、各分野の施策に基づく基本事業で柔軟に対応する。施策ごとに「目的と成果目標」「貢献するSDGs」「現状」「課題と基本事業」で構成し、簡潔に取りまとめる方針。次回の審議会は10月下旬に開催する。