対応の基礎 いま一度学んで 大規模林野火災発生から半年 大船渡で初の講習会 県内の消防士らが参加(別写真あり)
令和7年8月27日付 7面

大船渡市盛町の市防災センターで26日から、火災現場で対応にあたる消防士を対象に火災の基礎知識などを学ぶ講習会が開かれている。火災での死傷者や消防士の殉職事故などが全国的に発生している中、火災発生のメカニズムや状況に合わせた適切な対応等の基礎をいま一度学ぶことで、現場対応力の向上につなげようとのもの。2月に発生した大規模林野火災から半年を迎えた大船渡の地で、受講した県内の消防士たちが、住民と自らの命を守る正しい知識と対応を身につけている。講習会は27日も行われる。(菅野弘大)
講習会は、元大船渡地区消防組合職員で救急救命士の千葉善博さん(51)が代表取締役社長を務める㈱Survival Rescue Japanが主催し、県内では初開催。千葉さんも所属し、各種講習などを通じて、国内外の先進的な災害対応システムや技術を日本の風土に適した形で提供しているNPO法人ジャパン・タスクフォースが講師を務めている。
今回は、同法人が展開する講習のうち、火災に関する理論や根拠となる情報、火災現場において安全かつ効果的な活動を実施するために必要な要素を紹介し、個人の知識、技術の向上につなげる「Fire Tactics Courseアウェアネス」の講義を実施。26日は県内の消防士22人が参加し、約6時間の座学に臨んだ。
講師を務めたのは、同法人のインストラクター・西條善仁さん(50)=大阪府=。自身も元消防職員であり、現場での活動で得た知見も生かしながら、火災様相の理解から状況に応じた戦術の展開、機器などを駆使した効果的な消火、救助活動を行うすべを紹介した。
同法人は「ひとりでも多くの命を助け守る」を理念に掲げる。西條さんは「この理念は、住民の命だけでなく、活動にあたる消防士の命も指している」と語り、「安全な消火活動を実施するためには、常に現場でのリスク、危険を見つけられるか、探し続けられるかが重要だ」などと述べた。
現場において火災を「敵」、活動する消防士自身を「己」と置き換え、住宅をはじめとした建物での火災を想定して説明。「己」では、適切な状況把握と道具、戦術の活用、仲間、組織との連携などについて解説し、火災の全体を評価し、それぞれで考えることの大切さを伝えた。
座学のほか、屋外で箱型機材を使った実験も行われ、複数の扉を開閉することで変化する火の動きを目視で確認。現場で発生する爆発現象「バックドラフト」も安全の範囲内で実演され、参加者は動画を撮影するなどして、今後の現場活動での参考とした。
大船渡消防署三陸分署綾里分遣所に勤務する千葉幹太消防副士長(28)は、大規模林野火災の現場で連日対応にあたったといい「今年の林野火災は経験したことのない規模で、火の恐ろしさを改めて感じた」と振り返る。「日頃から訓練をしているが、火災についてまだまだ知らないこともあり、基礎の勉強は大切だと思った。火災現場では組織として活動するが、活動する一人一人が知識を持ち、有効的に動くことができれば、よりよい活動につなげられるのではないか」と講座の感想を話した。
千葉代表取締役は「時代の変化に伴い、建物は高気密化など多様化していて、対応も昔のようにはいかない。今回は建物の講座だったが、林野火災なども発生の原理は同じ。消火、救助の戦術は異なるものの、講座の内容をそれぞれでかみ砕いて吸収し、原点に戻って今後の消防活動に生かしてもらえたら」と期待を込めた。