新たな注意報・警報を提言 国の「消防防災対策のあり方に関する検討会」報告書 大船渡市大規模林野火災の教訓踏まえ 火気設備使用にも言及

▲ 取りまとめた報告書を手にする(左から)大沢長官、関澤座長、谷村次長=東京都

 消防庁と林野庁による「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」が取りまとめた報告書が26日、公開された。今年4月から重ねた協議をもとにした内容で、今後の消防対策として「林野火災注意報(仮称)の創設、林野火災警報(同)の的確な発令」の提言を盛り込むなど、乾燥・強風下で延焼が拡大した教訓が反映された内容となっている。消防庁は注意報や警報の提言に関して「最大限尊重したい」とし、今冬からの運用を目指す姿勢も示した。(佐藤 壮)

 

 検討会は、日本防火技術者協会理事長の関澤愛氏が座長を務め、委員は大船渡市消防団の大田昌広団長や県女性消防連絡協議会の佐藤菊子副会長、県森林組合連合会の澤口良喜代表理事専務のほか、学識経験者らで構成。気象庁や防衛省がオブザーバーに入る。
 大規模林野火災の避難全域解除から約1カ月が経過した4月11日以降、今月まで6回開催し、大規模林野火災の被害や消防活動の概要、森林の概況などを確認。さらに、緊急消防援助隊の活動と課題、地元消防組合・消防団の活動、火災直後の避難行動などに関する報告をもとに、議論を深めた。
 先月15日開催の第5回検討会では、消防庁長官の原因調査報告書が示された。薪ストーブの煙突からの火の粉を起因とした出火の可能性が相対的に高いとしながら、「具体的な発火源、出火に至る経過・着火物の特定には至らない」とまとめた。延焼要因には林野内の可燃物が乾燥していた状況や、火災初期の強風により、樹冠火を伴う激しい燃焼と飛び火が発生し、さらにリアス海岸の複雑な地形と局地的な風の影響を受けたことなどを挙げた。
 今月22日の第6回検討会では、報告書に関する協議が行われた。委員からは「実効性ある形で現場に展開していくことが課題。継続的な効果の検証を期待したい」「林野火災注意報や警報を発令する際は、発生防止につながるということをしっかり周知する必要がある」「林野火災が発生した場合は消防団員、消防隊員の安全確保に留意してほしい」といった意見が出たという。
 取りまとめた報告書の「手交式」は東京都内で開かれ、関澤座長のほか、消防庁の大沢博長官、林野庁の谷村栄二次長らが出席。関澤座長は「提言内容は、主に四つの柱でまとめている。報告書の趣旨を踏まえ、今後の対策に取り組んでいただきたい」と述べた。
 大沢長官は「かなりしっかりした報告書を取りまとめていただいた。実現・実施することが大事」、谷村次長は「これほど大規模な林野火災の対応は過去に経験がなく、専門的な知見や経験を踏まえた消防防災対策は意義深い。林野火災から国民の生命財産を守る観点から、予防や対策に取り組む」とそれぞれ語った。
 関澤座長が触れた「四つの柱」は▽林野火災における予防・警報のあり方▽大規模林野火災に対応できる消防体制のあり方▽大規模林野火災に備えた多様な技術の活用・開発▽災害復旧及び2次災害の防止活動──からなる。
 このうち、予防・警報で創設を提言している「林野火災注意報」は、前日まで3日間の降水量が計1㍉以下で、過去30日間の合計降水量が30㍉以下といった気象条件を想定し、屋外での火の使用で注意喚起を行う。「林野火災警報」は既存の消防法に基づく火災警報の制度を活用し、同注意報の状況に加え、強風注意報が出ている場合を想定。罰則付きで屋外での火の使用を制限する流れを描く。
 少雨の状況が全国的に広がっている場合、気象庁と消防庁の合同による臨時記者会見などを通じた注意喚起・解説にも言及。手交式後に行われた記者説明で、消防庁側は「最大限尊重したい」とし、今冬の運用開始を目指す姿勢を示した。
 報告書では、各自治体の火災予防条例に、たき火を届け出の対象として明文化することも求めている。さらに「林野火災の発生は、たき火や火入れによるものが中心となっているが、使用時に火の粉が飛散する恐れのある火気設備などが原因となる場合もある。取扱説明書に従って適切な方法で使用することや、強風時には使用しないことを徹底することが必要」と、原因調査で薪ストーブの煙突による出火の可能性に触れたことへの内容も盛り込まれた。
 報告書は、消防庁のホームページ内で公表。大船渡市はこれまでの検討会での内容をもとに、火災予防強化への方策検討を進めている。