各種課題解決へ要望 気仙3市町 知事に地域の実情訴える 大船渡で
令和7年8月30日付 2面

気仙3市町による対県要望は29日、大船渡市猪川町の大船渡地区合同庁舎で行われた。各市町の首長らが、震災復興や大規模林野火災対応、医療体制の充実など、それぞれの地域が抱える課題を達増拓也知事らに訴え、解決に向けた県の支援などを求めた。
対県要望は、次年度予算編成作業を前に、市町が抱える諸課題の解決に向けた予算配分や事業実施を求めるもの。要望事項は、大船渡市が16項目、陸前高田市が20項目、住田町が12項目。
このうち、陸前高田市では、佐々木拓市長と及川修一市議会議長が達増知事に要望書を提出。市側は石渡史浩副市長や鵜浦昌也副議長、幹部職員らも並び、県側は達増知事や沿岸広域振興局の小國大作局長、沖野智章副局長に加え、土木、水産振興など大船渡の各センター所長が対応した。
佐々木市長は、復興庁が震災からの復興事業を推進する出先機関として本県と宮城県に設置している岩手復興局を本年度いっぱいで廃止する方針としていることに触れ、「自治体において、ワンストップの窓口であった岩手復興局がなくなってしまうということで不安な面もある。県の支援、これまで以上にお願いしたい」と理解を求めた。
要望では20項目のうち▽第3期復興・創生期間における一部の復興事業の継続▽貝毒の自主検査費用の助成▽県営災害公営住宅の空き部屋の利活用▽新笹ノ田トンネル整備促進▽野外活動センターのエアコン設置──の5項目を取り上げ、具体的な状況を説明。
このうち、復興事業の継続では、8年度からの第3期復興・創生期間における被災文化財修復にかかる財政支援や災害援護資金貸付金の償還期間の延長、償還免除要件の緩和などを求めた。
同トンネル整備促進では、県が設置した「国道343号笹ノ田地区技術課題等検討協議会」がこれまでに4回開かれ、トンネル整備実現に向けた市民の期待が高まっていることから、「協議会での検討を早急に進め、広域観光の振興に資する早期事業化を」と訴えた。
県側では詳細な説明があった5項目について、現状認識や検討状況などを説明。被災文化財修復にかかる財政支援に関して、震災で被災した博物館では、平成24年度から文化庁の被災ミュージアム再興事業による支援を受けて被災資料の再生を図っている。県側では、文化庁が発表した8年度の概算要求に引き続き同事業が盛り込まれていることに触れ、「8年度以降の被災ミュージアム再興事業には、引き続き文化庁と協議のうえで対応していく」との方針を述べた。
新笹ノ田トンネルについて、県側は「一般国道343号は、気仙地区と内陸部を結び、東日本大震災津波伝承館と平泉の世界遺産をつなぐ教育や観光振興等を支える重要な路線」との認識を示し、引き続き、検討を進めていく方向だとした。
達増知事も「復興関係は、市長が言うとおり、国は15年を一つの節目に体制の変更を行うが、年月の経過で機械的に変えていくのではなく、必要な事業は続けていくという発想で取り組んでいかなければならない」など、各要望への所感を述べた。