市内の新規空き家 年間で30戸程度増加か 水道や電気の契約解除状況で調査
令和7年8月31日付 1面

大船渡市は令和6年度から、新たに生じた空き家の把握に向け、世帯全員がいなくなった家屋を対象とし、ライフラインの電気や水道の契約解除から1年以上が経過した場合に空き家として認定する取り組みを進めている。本年度から認定が出始め、年間30戸ほどのペースでの増加が見込まれることが分かった。市は引き続き調査を続けるとともに、空き家の発生抑制に向けた市民意識の醸成などを進める。(佐藤 壮)
空き家候補の選定・空き家の認定に関する取り組みは、28日に開かれた令和7年度大船渡市空家等対策協議会で示された。
元年度の実態調査に基づく市内の空き家件数は653件。新規登録は、通報のあった管理不全な空き家等について、現地調査を行って更新する手法を続けてきたが、3~5年度の登録は計11件にとどまっていた。より実態に合った新たな空き家の把握に向け、市は6年度から、新たな調査を取り入れている。
調査は、昨年5月27日に開始。転居や転出、死亡などにより、その住所から世帯全員がいなくなった家屋を対象としている。貸家や民間アパート、社宅、公営住宅等に加え、大規模林野火災の被災家屋は除く。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、空き家について「おおむね1年以上使われていない住居」とする。判断材料として、東北電力や市水道課に照会し、契約解除から1年以上経過している家屋を新たな空き家として認定することにした。
調査開始日から今年3月末までに移動があったのは113世帯。このうち、1年が経過した24戸について照会したところ、4分の1にあたる6戸が新たな認定の対象となった。市住宅管理課では「現段階では、年間30戸程度が新たな空き家候補として考えられる」と説明する。
こうした数字は本年度から、空き家台帳に反映する。ライフラインが契約中で空き家と認められなかった家屋は、今後も定期的に照会し、契約解除から1年が経過した時点で認定することにしている。
協議会の中で市当局は、6年度計画の実績などを説明。空き家に関する相談は83件で、前年度比12件減。全体としては減ったが、空き家の処分・活用に関する相談は32件で、同1件増だった。このほかの相談は、補助金関連が12件、管理が15件。草木の繁茂や害獣などの生活環境に関する通報は9件で、市内の空き家に関する状況の問い合わせは10件だった。
空き家台帳の登録から6年度に削除したのは21件で、記載総数は611件。削除したうち、自主的に解体したのは9件で、大規模林野火災で焼失したのは12件だった。
空き家などを解体・除却する支援策として危険空き家除却工事補助金制度を創設し、管理不全で倒壊や部材飛散などの恐れがある危険空き家を解体する費用の一部を補助。6年度実績は1件だった。
空き家バンクの登録件数は9件で、成立は6件。長期間成約に至らない物件も散見されるという。市では、登録可能な物件の掘り起こしなど、空き家の解消と空き家バンクの取り組みの検討が必要との観点から、本年度は周知方法を見直すことにしている。
また、空き家に関する「出前講座」を通じて、管理不全な空き家発生の抑制につなげるほか、アンケートをとることでより専門的なセミナーや相談会などの開催に向けたニーズ調査を行う方針。講師は市の空家等対策係職員が務め、地区・地域の学習会や高齢者交流サロンなど、おおむね10人以上が見込まれる団体や集会を対象とする。
内容は▽市の空き家に関する状況▽管理不全な空き家▽事前の対策▽住まいのエンディングノートの紹介──を想定。本年度は地域包括ケア推進室で実施している「高齢者交流サロン講師派遣事業」の登録や広報への掲載を行い、周知を進めている。