自慢のポリフリー米国進出の第一歩 ひころいちファームの村上代表
令和7年9月12日付 3面

米粉を使ったパスタスナック「ポリフリー」を製造・販売している陸前高田市のひころいちファーム代表の村上一憲さん(47)は、商品の売りである「グルテンフリー」の食品市場が拡大している米国への輸出を目指し、13日(土)に渡米してマーケティング調査を実施する。現地では展開する全6種類のポリフリーの試食会などを行う。創業から今年で15年。東日本大震災に遭い、苦難の連続だったが、農業の6次産業化、安全・安心の食の提供にこだわり続けてポリフリーを生み出した。自慢の商品の米国デビューにつなげられるよう、その足がかりとなるPRへ意欲を見せる。(高橋 信)
あす渡米 ポートランドなどで試食会
米国での市場調査は、震災被災地の食品産業の長期的支援を展開する一般社団法人・東の食の会(本部・東京都、楠本修二郎代表理事)の橋渡しで実現。いわて産業振興センター(盛岡市)の「いわて希望応援ファンド地域活性化支援事業」の採択を受け、同事業の助成金を活用する。
13日に日本をたち、14日(日)から16日(火)まで米西海岸のオレゴン州ポートランド、カリフォルニア州サンフランシスコの商業施設でポリフリーの試食を提供するほか、スーパーの視察などを行う予定。
大船渡市日頃市町出身で、農家に生まれた村上さん。平成22年、農産物の生産、加工などを手がけるひころいちファームを創業した。
地道に農業と向き合う日々で、生産規模は小さかったが、「全国に岩手の農業の魅力を発信したい」と夢は大きかった。そんな中、翌年、震災が発生し、陸前高田市内の自宅兼事務所や畑などが被災した。
「ショックだったが、もともと裸一貫からのスタートだった。絶対に諦めたくなかった」。仮設の工場で自家製の米を原料にした生麺作りに乗り出し、その後、主力商品となる「米粉パスタスナック」を開発した。
ポリフリーは米粉パスタスナックをリブランディングし、令和4年から販売。「カリポリ」という食感と、特徴である「アレルゲンフリー」「グルテンフリー」「化学調味料フリー」にちなんで命名した。
味の種類は、野菜ブイヨン、えびせん風、のり塩、赤しそ梅、オニオン、ニラ南蛮の六つ。子どもが安心して食べられると同時に、大人の酒のつまみにも最適で、関東圏など順調に販路を拡大し、安心・安全な食品、加工品のみを扱うECサイトでも人気を博す。
取引先や顧客などから「海外でも通用するのではないか」と背中を押され、昨年秋から可能性を模索。ポリフリー開発などでサポートを受けてきた東の食の会がコーディネートを引き受け、1年がかりで渡米がかなった。
村上さんは「創業当時や震災時のことを振り返ると本当に苦労した。自ら作った農作物、また県産のおいしい食材の素晴らしさを伝えたいという夢を持ち、仕事を続けてきて良かったと今になって思う。まだ夢は終わりではない。全国や海外に向けて岩手の食、農業の魅力を、商品を通じて発信していく」と意気込む。