森林災害復旧事業の要件示す 大規模林野火災 市主催の地域説明会 活用対象の個人・団体に意向確認実施へ
令和7年9月14日付 1面

大船渡市大規模林野火災の森林復旧に向けた市主催の地域説明会が12日夜、赤崎町の蛸ノ浦漁村厚生施設で開かれた。激甚災害指定に伴う森林災害復旧事業や水源林造成事業を、被災した人工林約1700㌶のうち2分の1超の面積で優先的に進める方針で、該当要件が示された。森林災害復旧事業の活用対象となる約500個人・団体に対して、意向確認の書類を送る流れも確認。説明会は、三陸町綾里の綾姫ホールでも16日(火)午後7時から開催される。(佐藤 壮)
16日は三陸町綾里で開催
地域説明会は、被災森林の所有者・管理者が対象で、この日は約40人が出席。市側は山岸健悦郎農林水産部長や佐藤雅基農林課長に加え、県、林野庁三陸中部森林管理署、気仙地方森林組合の各職員らも並んだ。
市側は、森林復旧の進め方を説明。被災面積が約3400㌶に及ぶ中、局地激甚災害指定で適用される森林災害復旧事業の活用を念頭に置きながらも、計画期間や作業人員確保、財源確保に難しさを抱える中、利用可能な他事業も活用し、森林の公益的機能の現状復旧を図る。
被災森林のうち、被災森林の約50%に当たる約1700㌶の人工林から、条件に沿って事業適用区域を絞り込む。天然林は、天然更新による自然復旧を基本とする。
県が進める被害調査で「大(高さ2㍍以上の焼損)」「激(立木の全体・大部分が焼損)」の判定となり、居住地や大船渡湾、漁場、ダムなどの重要インフラといった保全対象を勘案しながら選定。ここまでで該当する約1800筆の山林を所有する約500個人・団体に対し、森林災害復旧事業を導入するかの意向確認を行う(別掲図参照)。
意向確認は、16日の綾里での説明会が終了次第、順次発送。締め切りは10月17日(金)必着とする。実施を希望する旨の回答があった場合、森林所有者に通知する。
森林災害復旧事業では、被害木の伐採と整理作業(地ごしらえ)に加え、スギ、カラマツなどの針葉樹やコナラ、ブナなどの広葉樹の植樹、シカ防護網の設置などを行う。5㌶以上のまとまった整備を行える区域を選定するが、複数の森林所有者でも可とする。
市と協定を締結し、植栽後、森林保険に10年間加入することが要件。森林所有者や管理者には、下刈(除草)や除伐、間伐など森林整備実施による管理を求める。
伐採や植栽に対する所有者の負担はないが、森林保険の保険料や除草作業以降の管理費用などが発生することになる。木材の運搬・売却も所有者負担となり、木材売却益よりも運搬費用が上回る可能性があるという。下刈費用の概算は1㌶当たり年間4・8万円で、5年間行う想定を説明した一方、市は負担軽減に向けた方策を検討する考えも示した。
被害木の伐採のみに対する補助金はない。一方、市は被災木が建物などに倒れる2次被害を防ぐ目的で「被災危険木除去事業費補助金」を創設し、伐倒や除去の経費のうち、9割、最大90万円を補助する。市道沿いなどの危険木除去も進めることにしている。
森林災害復旧事業に該当しない地域では、森林整備事業を導入。0・1㌶以上が対象で、施業内容や所有者負担などは森林災害復旧事業と同じだが、同事業よりも着手開始時期は遅れる。森林整備事業の該当が見込まれる所有者には、意向確認資料は送付されない。
出席者からは、森林保険料について詳細な説明を求める発言も。植栽の樹種に関する説明もあり、市側はある程度まとまった面積を一つの樹種で行いたい意向も示した。おおむね30㌶程度を想定し、所有者が複数になる場合も考えられることから、今後調整する。
森林管理が長期に及ぶことなどを念頭に、復旧事業への不安を示す声も出た。激甚指定に伴う森林災害復旧事業は令和10年度までとなっているが、広範な面積で同事業の導入を目指していることも明らかになり、期間延長や市の財源確保といった必要性も浮き彫りになった。
綾姫ホールでの説明も、同じ内容で行う。蛸ノ浦地区の住民らも出席できる。