伝統の舞 都心で発信 住田町の柿内沢鹿踊 「TOKYOわっしょい」出演(動画あり)

▲ 東京駅前で勇壮な舞を披露した柿内沢鹿踊

  世界陸上に合わせ12日~14日に東京駅前の行幸通りで開かれたTOKYO FORWARD2025文化プログラム「TOKYOわっしょい」(東京都など主催)に、住田町世田米の柿内沢鹿踊が出演した。同鹿踊保存会(吉田信孝会長)の東京支部メンバーを中心に、地元からも踊り手が参加。国内外から集まった多くの観衆を前に勇壮な舞を披露し、都心から住田の芸能文化を発信した。(清水辰彦)

 

 同プログラムは、世界陸上・デフリンピックが東京で開催される今年、東京オリンピック・パラリンピックの文化プログラムを継承・発展させた新たな取り組みとして実施。東京駅から皇居へ続く行幸通りを会場とし、ステージとやぐらを設置。独自性と多様性あふれる東京の祭りや芸能など、約20団体によるパフォーマンスが繰り広げられた。
 「TOKYOわっしょい」の出演団体は都内で活動する団体がメインだが、東京支部があることから柿内沢鹿踊の参加が実現した。
 同支部は、10年ほど前から住田町に通い、柿内沢鹿踊を学んでいる都内在住アーティストらによって令和4年に設立された。東京支部メンバーは月に1回、都内で鹿踊の練習に励んでいるほか、5年に挙行された世田米の天照御祖神社式年大祭にも参加。今年3月には、県沿岸広域振興局とNPO法人いわてアートサポートセンターが主催した地域活性化事業の一環として町役場で鹿踊を披露するなど、住田との交流が長く続いている。
 「TOKYOわっしょい」では、最終日の14日午後に柿内沢鹿踊が出演。東京支部メンバー5人と、地元在住者4人の計9人が参加した。
 皇居と東京駅を結ぶ行幸通りは普段から外国人観光客も多く、同日は世界陸上期間中とあって、さらに多くの外国人の姿が見られた。
 高層ビル群が夕焼け色に染まり始めたころ、柿内沢鹿踊がパフォーマンスエリアに登場。太鼓を打ち鳴らしながら背に付けたササラを振る豪快かつ繊細な舞に、会場を埋め尽くした大観衆からも拍手が送られた。
 地元メンバーの練習は盆期間ごろから本格化し、地域の集会所で週2回ほどの夜間練習に汗を流してきた。〝東京公演〟を通じて、住田の伝統芸能やまちをPRし、人を呼び込んで関係人口の創出にもつなげようと意気込んできた地元保存会のメンバーたち。
 踊り手の中心となる「中立」を務めた佐々木康裕さん(39)は公演後、観衆に向けて「普段なかなかできない場所で踊らせてもらえて、普段見れない人にも見てもらうことができた。興味を持ってもらえたらうれしい」とPRした。
 東京支部ではこの日に向け、6月から練習日数を増やしたほか、盆期間にも住田を訪れて練習に励んできた。
 東京支部代表を務める都内在住の俳優・清水穂奈美さん(37)は「普段、東京では鹿踊を見る機会は少ないと思う。海外含め、いろんな人に見てもらえてよかった。これをきっかけに、見ている人が少しでも芸能に興味を持ってもらえたらうれしい。東京と住田の交流は、今後も続けていきたい」と達成感に満ちた表情を浮かべていた。