気仙の住宅地 全てで下落 県の7年度地価調査結果 人口減少で需要低迷 大船渡は林野火災も影響
令和7年9月17日付 1面

県は、令和7年度地価調査結果の概要を公表した。住宅地の平均変動率は、気仙3市町の全てで前年度に続く下落となった。気仙は人口減少による土地需要の低迷が響き、大船渡市と住田町では下落幅が拡大。大船渡市では2月に発生した大規模林野火災の影響によって、住宅地や商業地でさらに大幅な下落がみられ、住宅地の「赤崎町字鳥沢166番地17」は変動率(▼はマイナス)が▼4・9%と、県内最大の下落率となった。(三浦佳恵)
地価調査は適正な地価形成を目的に、県が不動産鑑定士の鑑定評価に基づいて基準地の標準価格を判定するもの。価格時点は7月1日。地価公示とともに、一般の土地取引価格などの指標となる。
県内の調査対象は、33市町村の基準地354地点(宅地・宅地見込地343地点、林地11地点)。気仙3市町は大船渡市が13地点(同12地点、同1地点)、陸前高田市と住田町が住宅地・宅地見込地のみ各4地点の計21地点。住田町の商業地は選定替えが行われ、従前の「世田米字世田米駅7番内」から「世田米字世田米駅18番」に変更された。
気仙3市町の用途別平均価格(宅地・宅地見込地1平方㍍、林地10㌃当たり)と平均変動率をみると、大船渡市は住宅地2万700円、平均変動率▼3・2%、商業地4万5700円、同▼3・2%、工業地1万5500円、同▼1・3%、林地3万3400円、同▼1・5%。
住宅地の下落は10年連続となり、下降幅は前年度から1・5ポイント拡大。商業地も下降幅が前年度から0・5ポイント広がった。前年度は横ばいだった工業地、林地も下落に転じた。
同市では人口減少に加え、大規模林野火災も大きく影響した。県内でマイナスの変動率が大きかった上位基準地のうち、1位は赤崎町鳥沢、2位は「三陸町綾里字中曽根38番1」の同▼4・2%だった。
鑑定評価を行った地価調査岩手分科会の代表幹事によると、赤崎町と三陸町綾里の各基準地に直接の被害はなかったものの、▽周辺の山林が被災▽道路沿いの焼損木が倒れる危険性▽大雨時における土砂災害発生のリスク▽倒木による停電といった2次被害の可能性──などを考慮し、価格に反映したという。商業地は、林野火災による避難指示期間中の売り上げ減少といった間接的な被害を受けたことなどが響いた。
今後については、「今回は1年目ということで大きな下落となったが、これから復旧・復興が進むにつれてマイナス要素は改善されていくのでは」との見通しを示している。
陸前高田市は住宅地1万5200円、同▼1・1%と下落。下降幅は前年度から0・3ポイント縮小した。
住田町は住宅地6900円、同▼1・7%と下落し、下降幅は0・7ポイント拡大。選定替えとなった商業地の価格は1万5400円となった。
県全体をみると、住宅地256地点の平均価格は2万6700円。平均変動率は▼0・2%となり、2年連続で下落した。気仙を含む人口減少率が比較的大きい沿岸部では、前年並みの下落が続いた。
県内で上昇したのは、盛岡など9市町の91地点(前年度比3地点増)。気仙を含む沿岸部は上昇地点がなかった。宅地見込地2地点の平均価格は1万4200円で、平均変動率は1・3%。
商業地72地点の平均価格は4万5500円、平均変動率は▼0・9%と前年度から0・2ポイント縮小し、32年連続で下落した。価格が上昇したのは、盛岡などの4市町16地点。
工業地13地点の平均価格は1万2800円で、平均変動率は1・7%と、上昇は7年連続。盛岡など8市町の10地点で上昇した。
林地の平均価格は5万4800円、平均変動率は▼0・4%で、下落は31年連続。国産材需要は高まっている一方、林業経営の先行き不安や従事者の後継者不足などで林地需要の低迷が続き、下落率は前年から拡大した。
気仙地区の地価(基準値)は別表の通り。