自助・共助の「好事例」共有 東日本大震災以降初の自主防向け説明会 大規模林野火災の避難行動踏まえ
令和7年9月18日付 1面

東日本大震災以降では初となる大船渡市主催の自主防災組織向け説明会が16、17の両日、赤崎町の漁村センター内にある市防災学習館で開かれた。市側は、今年2月に発生した大規模林野火災の迅速な住民避難行動などを踏まえた自助・共助の重要性を取り上げ、避難行動の「好事例」を紹介。市主催の防災訓練などに合わせた取り組みの充実に期待を込めた。出席者は避難支援体制などについて意見・質問を寄せた。(佐藤 壮)
市内には現在、地域公民館や町内会単位などで103団体の自主防災組織がある。近年頻発している大規模災害発生時は、初動対応で行政支援が行き届かないことが想定される中、地域防災力の向上を図ろうと企画。16日は大船渡、末崎、立根、日頃市、猪川の各地区、17日は盛、赤崎、蛸ノ浦、綾里、越喜来、吉浜の各地区を対象に開催した。
16日は約20人、17日は約30人が出席。市防災管理室の伊藤晴喜次長が、2月26日に発生した大規模林野火災について、消防庁長官による火災原因調査報告書や避難指示発令の経緯などを解説した。
消防本部による火災発生覚知は午後1時2分。強風下での飛び火などで急速に延焼が拡大したのを受け、約50分後に避難指示を出し、指示から30分後には綾里地区の全域850世帯、2060人に拡大した。夕方にはほとんどの住民が地区外への移動が完了した足跡を振り返った。
避難所に関しては、津波や土砂災害では想定していない越喜来の三陸公民館も活用。伊藤次長は「普段は避難所にならない場所だが、使わざるを得ない状況だった。快く承諾していただき、市役所職員が着く前に避難者を受け入れていた」と住民や地域・地区組織の力を強調した。
林野火災時の自助・共助の有効性に関しては▽隣近所に声がけをし、地域住民の協力で多くの人が迅速に避難できた▽地域の放送設備を用いて、避難を呼びかけた地域があった▽高齢者らに個々に電話連絡し、避難を呼びかけた地域もあった▽福祉事業者の車両によるピストン輸送など、避難活動への支援が行われた──を挙げた。
さらに、石川県で昨年発生した能登半島地震での津波避難の好事例として、珠洲市三崎町寺家下出地区での定期的な訓練を通じた、地元集会所への避難行動徹底の取り組みを紹介。平成30年の西日本豪雨では、愛媛県松山市高浜地区で行政の指示を待つことなく1軒ずつ避難を呼びかけ、住家全半壊の被害があった中でも犠牲者を出さなかった成果に触れた。
そのうえで、10月5日(日)に予定されている市防災訓練を活用した避難行動の確認や「声がけ」などの実施を呼びかけた。続いて、防災管理室職員が、昨年度の市防災訓練に合わせて自主防災組織52団体が独自訓練を行った状況を説明した。
このうち、31団体が実際の避難を通じて、所要時間や避難先での人員把握といった確認を実施。事前にハザードマップを把握し、避難経路や避難方法の確認を行ったのは20団体だった。このほかにも、防災資機材や地域内の避難行動要支援者の各確認、自主防災組織本部の設置、避難所運営マニュアルに基づく避難所開設訓練を行った団体もあった。
質疑応答では、避難行動要支援者名簿の取り扱いについて複数の出席者から発言が出た。「高齢になって支援が必要になった場合、どこに申し込めばいいのか、そのシステムが分からない」との指摘が寄せられ、住民側が掲載希望を申し出る流れとなっていることから、情報共有や周知の重要性も浮き彫りになった。