災害からの復興感じて 火災の爪跡も知る機会に 見て・撮って 食べて・走って 大船渡応援ロゲイニング(別写真あり)
令和7年9月21日付 7面

NPO法人ディスカバー・リアス(中尾益巳代表理事)が主催する「大船渡応援ロゲイニング」は、20日に始まった。初日は「WEST大船渡」として大船渡市盛町~末崎町・碁石海岸までを舞台に、参加者が自在な形でオリエンテーリング。配られた地図を手に知力・体力をフル稼働させ、復興した街並みや三陸の美しい風景をめぐった。21日も赤崎町や三陸町の綾里、越喜来、吉浜を訪ねる「EAST大船渡」エリアで競技が実施され、大規模林野火災で被災した地域の現状なども知ってもらう機会とする。 (鈴木英里)
風景や食事、人との出会いを楽しみながら時間内により多くのチェックポイントをめぐり、設定された得点を積み上げて総合点を競うロゲイニング。ディスカバー・リアスは、東日本大震災から復興してきた街並みと人々の力強さ、自然の景観、震災を経ても残った歴史的遺産などを直接感じてもらおうと、3年前から本県沿岸部各地で4回、「さんロゲ(三陸ロゲイニング)」と銘打ったイベントを開いている。
5回目となった今回は、今年春に発生した大規模林野火災で傷ついた地域を含む、大船渡市への支援を目的に開催。県内外から2日間で延べ140人が参加する予定で、参加料のうち1人当たり1000円が市などに寄付される。
実施にあたっては、三陸鉄道とJR東日本盛岡支社が協力。「WEST」では大船渡線BRTに、「EAST」では三鉄に乗車して移動時間も短縮しながら、参加者が車窓の風景も楽しめるよう工夫された。
初日はあいにくの雨天ながら、およそ60人が大船渡町のおおふなぽーとを元気にスタート。出発までのわずかな間には、当日配布された地図とチェックポイントの配点、BRTの時刻表とにらめっこしながら、いかに効率よく、また行きたい場所を巡るかチームで作戦を練り上げた。
駅から離れた場所や標高の高い場所は配点も高い一方、体力勝負になる。駅に比較的近い場所で地道に得点を重ねるか、一気に高得点を取りにいくかも時々打ち合わせし直しつつ、参加者はチェックポイントの景色を楽しみながら「証明写真」を撮影。発災当時の様子に思いをはせるなどしたほか、特産品を使った食事や名物の購入も楽しんだ。
このうち、佐々木裕行さん(65)、在川あづささん(52)、久保千暁さん(50)のチームは仙台市から参加。ロゲイニングの魅力について、在川さんは「地元にいても知らない・行ったことがないような場所、気づかなった新しい良さを知ることができるところ」といい、久保さんは「おいしいもの、特に海鮮丼を食べたい」と大船渡開催ならではの楽しみにも期待を寄せた。
佐々木さんは「火災のニュースを見て、あまりのことに言葉を失った。震災からの復興途上なのに、また大変なことが起きてしまったと。たいしたことはできないし、『頑張って』と簡単に言えるようなことではないけれど、せめてこうして参加してお金を使い、応援の気持ちを示したい」と語った。
ディスカバー・リアスの中尾代表理事(64)は「県内外の人たちにこの場所を訪ねてもらうことが何よりの目的。『被災地でボランティアを』などと無理に考えなくても、遊びに来てさえくれたら、必ず何かを受け取ってもらえる。自分の足と目で地域を見つけるロゲイニングは、観光ツアーよりも一層、参加者が何かを考えるきっかけづくりになる」と話していた。