未曽有の火災 経験を共有 陸前高田、住田両市町の消防団員 大船渡市の大田団長招き防災力向上へ対応や課題聞く 

▲ 大規模林野火災にかかる活動を振り返る大田大船渡市消防団長(中央)

 陸前高田市消防団(大坂司団長)は21日、高田町の市コミュニティホールで、大船渡市消防団の大田昌広団長らを招き、同市大規模林野火災にかかる講演会を開いた。陸前高田と住田両市町の消防団員が聴講。延焼面積が平成以降で国内最大に及んだ林野火災への消防団としての対応をはじめ、浮き彫りとなった課題や求められる備えなどについて理解を深め、地域の防災力や災害対応力の向上へのヒントとした。(千葉雅弘)

 

報告に耳を傾ける陸前高田と住田両市町の消防団員ら

 大船渡市大規模林野火災は2月26日に発生し、4月7日に鎮火。延焼範囲は市内面積の10%超にあたる3370㌶で、平成以降で国内最大規模となった。市民1人が犠牲となり、建物被害は226棟。産業面などを含めた被害額は市と県のとりまとめで39億円余り(先月22日時点)に上り、森林被害の調査が進めばさらに拡大する見込み。
 講演会は、直接的な被害のほか市民生活にも大きな影響をもたらした未曽有の火災について改めて知り、今後の活動の教訓にしようと、陸前高田市消防団が主催。住田町の団員にも参加を呼びかけ、両市町の団員ら合わせて約130人が出席した。
 大坂団長は「大船渡の皆さんが厳しい状況下で力を尽くしたことは消防団の誇りであり、その姿が地域住民の安全・安心にもつながった。経験を気仙地区で共有し、より強い消防団をつくっていきたい」とあいさつした。
 このあと登壇した大田団長は、「令和7年大船渡市大規模林野火災活動報告」として、大規模林野火災の直前に三陸町綾里と小友町で発生した二つの林野火災も含めて、消防団の活動について振り返った。
 一連の火災では延べ3460人の団員が46日間にわたって活動した。発生直後には消防隊と連携した消火、水利・火点への中継送水、緊急・一般車両の誘導、避難の呼びかけ・誘導、鎮圧後は熱源確認や残火処理などを展開。「心身の疲労が蓄積した中にあっても、団員は役割を全うし、現場活動が向上していったのを感じた」と振り返った。
 水利の確保や中継送水への迅速な対応、火勢を受けた地元分団が早期に退避を判断したことなど、過去の訓練や現場経験、そして土地勘が功を奏した事柄についても伝えた。
 一方で、資機材の破損や不足、地形による無線機や携帯電話の不通、火点の点在に応じた統制・指揮のとり方など、長期にわたった活動の中で浮き彫りとなった課題を列挙。
 これらを踏まえ、自身も委員を務めた「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方検討会」の取りまとめでは、▽消防隊等と連携できる情報伝達体制の構築▽大規模火災に的確に対処できる体制の強化▽火災対応に必要な資機材の整備▽自主防災組織等と連携した避難訓練等の実施による地域住民の防災意識の向上──の重要性が示されたことを伝えた。
 大田団長は「問題は山積しているが、あすにも災害は起きるかもしれない。まずは備えることから。経験を教訓に変えてともに闘おう」「地域に根差した活動ができるのが消防団の強み。これからも、自分たちの地域は自分たちで守る『義勇愛郷』の精神をもとに活動していこう」などと呼びかけた。
 講演後の質疑は大田団長のほか副団長や本部長ら同市消防団の四役が対応。遠距離の送水にかかる手法などの情報を交わしたほか、2月25日に小友町で発生し大船渡市末崎町まで延焼した火災で両市消防団が連携して活動した経緯に触れ、「市をまたいだ活動となったが、打ち合わせの必要性を実感させられた」という声も。出席者は今後の活動に反映させるべく、終始真剣な表情で臨んでいた。