利用・予約58・8%に到達 市内16施設の宿泊費助成「復興割」 11月末まで平日を中心に適用
令和7年9月24日付 1面

大船渡市大規模林野火災を受け、市内の宿泊施設を利用する観光客に対し、1泊当たり上限3000円の助成と、飲食店で使用可能な1000円分のクーポン券を配布する市の「大船渡復興割事業」。6月下旬から始まり、8月末までの助成分と11月までの予約分の合計額は1764万円と、予算3000万円に対して58・8%となった。11月まで主に平日のチェックインで適用されるが、予算上限に達し次第、終了となる。新たな来訪需要の掘り起こしに向けた利活用の行方が注目される。(佐藤 壮)
飲食・購入のクーポンも

「復興割」利用の宿泊者には1000円分のクーポン券も配布
大規模林野火災以降、同市への旅行を見合わせる動きが見られる中、市は観光需要や消費拡大の喚起などを図ろうと準備を進めてきた。市内16施設で6月29日のチェックイン分から適用されている。
宿泊施設を利用する観光客らは、本来の宿泊料金から宿泊料金に応じて、3000円、2000円、1000円、500円をそれぞれ割り引いた金額で宿泊できる。市内の登録事業者(大型店舗除く)で利用可能なクーポン券も1泊当たり1000円分(500円×2枚)配布している。
期間のうち、土・日、祝日の前日に加え、8月3日~14日の宿泊は対象外とした。事業開始前に受け付けた予約者や、市内在住者(免許証等で確認)は利用できず、遠方からの新たな需要の取り込みに主眼を置いている。
事業を受託している市観光物産協会によると、8月末時点での集計で、6~8月に4167人の利用があり、助成額は902万円。6月は実質2日間で37万円だったが、7月に約600万円に伸びた。8月は適用期間が短く、225万円だった。
9~11月の予約は3390人、862万円。利用・予約を合わせた総額は1764万円となっている。期間は12月1日(月)のチェックアウト分までだが、予算に達し次第締め切る。1万泊分を用意しているクーポン券が先に上限に達した場合は、割引のみが適用される形になる。
利用回数に制限はないが、連泊は1回につき2連泊が上限。団体旅行も対象とする。オンライン予約も対象とする一方、他の割引やクーポン等を併用する場合は、こうした割引適用後の宿泊料金から、復興割事業の割引額を決定する。
市はコロナ禍にも「大船渡に泊まってHappy!大作戦」と称して宿泊費の助成事業を進め、第1弾は令和2年9月~3年2月、第2弾は同年7月~4年1月に、第3弾は同年9月~5年1月に実施した。今回は平日利用に限定し、助成額も細分化していることから、利用・予約は落ち着いた動きとなっている。
今後は、平日も旅行に出かけやすいシニア層の取り込みがポイントになりそうだ。市観光物産協会では、復興割を生かした旅行商品造成もアピールしており、実際に今月以降に団体旅行を企画しているといった動きも見られる。さらに、大規模林野火災の被災状況や復旧・復興の歩みを目にしたい層への周知も鍵になる。
東日本大震災の復興事業で整備された大船渡駅周辺地区には、宿泊施設や飲食施設が多く進出。宿泊客の受け入れ環境は、沿岸部でも強みの一つとなっている。宿泊を伴う長い滞在時間をつくり、市内経済全体に効果を生み出し、大規模林野火災からの復旧・復興につなげるためにも、復興割利用のさらなる周知が求められる。
市の古内弘一観光交流推進室次長は「これまでは酷暑が続き、移動や旅行を控える動きもあったと思う。秋の行楽シーズンを迎え、この復興割を利用して、市内に宿泊し、観光や秋の味覚を楽しんでほしい」と話し、期待を込める。
割引額や対象施設は別掲。