キャッセンプラットフォーム・市消防団 防災功労で総理大臣表彰 震災の教訓発信、林野火災時の活動評価

▲ さらなる活動の充実を誓うキャッセンエリアプラットフォームと市消防団の関係者ら

 大船渡市のキャッセンエリアプラットフォーム(代表・田村滿㈱キャッセン大船渡代表取締役)と同市消防団(大田昌広団長)が、令和7年防災功労者内閣総理大臣表彰を受賞した。キャッセンエリアは「防災観光アドベンチャー『あの日』」を通じた防災学習プログラム、市消防団は大規模林野火災に伴う鎮火までの約40日間の活動に対する功績が評価された。両団体とも、今後に向けて平時からの体制充実などを誓う。(佐藤 壮)

 

 この表彰は、災害時における人命救助や被害抑制をはじめとした防災活動の実施、平時における防災思想の普及・防災整備面で貢献し、その功績が顕著であると認められた団体・個人を対象としている。今年は全国で14個人、58団体が選ばれ、県内では大船渡市の2団体のみだった。
 キャッセンエリアプラットフォームは、東日本大震災後に設立され、まちづくり会社である㈱キャッセン大船渡を中心に、津波復興拠点整備区域である大船渡駅周辺地区に立地する事業者や市で構成している。
 同エリアを中心に体験できる「あの日」は、スマートフォンから東日本大震災の経験を伝える音声が流れ、高台への迅速な避難など「生きる知恵」を学べる仕組み。令和3年に公開し、東北大学災害科学国際研究所の柴山明寛准教授が共同開発・監修を担う。
 地元住民・事業者の経験を基にした「避難行動」に焦点を当て、音声などで拡張現実(AR)に触れながら、震災の疑似体験に没入できる。教育旅行などを通じて4年度は485人、5年度は437人、6年度は594人を受け入れ、地域の活性化や高付加価値化に結びつけている。
 市消防団は、大規模林野火災が発生した2月26日から鎮火宣言に至った4月7日までの41日間にわたり、多方面で活動。避難指示地域が拡大していく中、迅速・懸命に避難誘導や広報活動を行った。
 林野火災としては平成以降で最大の焼失面積となった中、無水利地区での長距離中継送水、消防署隊と連携して円滑な消火活動を展開。住民の生命・身体・財産を守るために努めた功績が評価された。
 表彰式は今月17日に、首相官邸で行われた。26日はキャッセン大船渡の千葉隆治取締役、「あの日」統括ディレクターの土方剛史さん、キャッセンで「あの日」の運営を担う地域おこし協力隊の今野響さん、大田団長、柴山准教授が市役所を訪れ、渕上清市長らに受賞を報告した。
 大田団長は今年6月に受けた消防庁長官表彰にも触れ、「市長をはじめ、市民の皆さんの温かいご支援に加え、消防や警察、自衛隊をはじめとする関係機関のご協力のたまものであり、団員一同心から感謝する。今後も地域の安全・安心を守るため、全力を尽くす」と述べた。
 千葉取締役は「大船渡に来てもらってこそできる体験。震災の経験者も、画像と音声で参画している。プラットフォームは官民連携の取り組みであり、今後も防災啓発や津波伝承に力を尽くしたい」と語った。
 渕上市長は「これまでの取り組みに敬意を表したい。より活動を進化させてほしい」とあいさつ。また、消防団に対しては、未曾有の被災規模の中で団員による事故などを出さずに消火活動が展開されたことにも触れ、柴山准教授は「平時の素晴らしい活動があってこそ」とたたえた。
 懇談では「あの日」に関して、市内の中学生らの体験利用の推進や、林野火災に関するプログラム追加のアイデアなどが話題に。県内の中学校、高校へのアピールにも力を入れており、さらなる周知に向けた官民の協力推進も誓い合った。