日米の専門家集い発信 大船渡で「トレイル・メンテナンス・ミーティング」 大規模林野火災の復旧・環境保全テーマに きょうまで(別写真あり)

▲ 延焼エリアの保全などを見据えて意見を交わしたシンポジウム

 大船渡市大規模林野火災で被災した、みちのく潮風トレイルのルート復旧や環境保全を探る「トレイル・メンテナンス・ミーティング」が27日、三陸町越喜来の三陸公民館で開かれた。シンポジウムでは、日米の専門家が今後も地元やハイカーらに愛される道としてあり続けるための視点や、持続可能な協働体制のあり方などを発信。28日には、綾里峠や綾里崎の各コース沿いでトレイル整備が行われる。(佐藤 壮)

 

みちのく潮風トレイルに関する資料展示や販売コーナーも

 この催しは、認定NPO法人みちのくトレイルクラブ(宮城県名取市)が主催し、一般社団法人大船渡地域戦略が共催。林野火災の対応などにあたる米国の環境保全部隊を招き、整備の考え方を学び、実際にトレイルでの作業を行うことで、トレイルを守る人材の育成やネットワークづくりにつなげようと企画し、市内外から約100人が参加した。
 初日のシンポジウムでは、米国カリフォルニア州で若者による自然保護や災害対応など公的プログラムを運営するカリフォルニア・コンサベーション・コー(CCC)のJP・パットンさんが、林野火災に関する活動などを紹介した。
 「綾里崎・綾里峠 火災からの回復に向けて」と題したパネルディスカッションでは、CCCスーパーバイザーのアンドレア・ガルシアさん、京都大学防災研究所特定准教授の峠嘉哉さん、大船渡市観光交流推進室次長の古内弘一さん、環境省三陸復興国立公園管理事務所大船渡管理官事務所の山本航さん、みちのくトレイルクラブ大船渡支部の坂本麻由子さんが登壇。進行は同クラブの相澤久美事務局長が務めた。
 綾里崎などのコースは延焼区域内にあり、6月9日からハイカーらの通行が再開。古内さんや山本さんは、地域住民らの理解などを重視しながら調整を重ねた歩みを振り返った。
 今後に向けて、古内さんは被災木の倒木や本格化する森林再生事業を挙げ、大規模な迂回ルートを設ける可能性に言及。そのうえで「訪れる方々にとって魅力があるコースであることを常に意識しながら整備にあたることが大事と考える」と述べた。
 山本さんは「行くたびに、どこかしら変化がある」とし、定期的な巡視の重要性を指摘。坂本さんも変化に気づく大切さに触れながら「注意して見ていく観察の目を増やすことが重要。こうした取り組みが火災以外のエリアの保全にもつながるよう、横展開になっていけば」と語り、ハイカーらの参画に期待を込めた。
 アンドレアさんは「林野火災の現場では、水の流れに変化が起きている場所への対応が重要」と発言。枯れた木を取り除くだけでなく、長期的な視点で環境を守り、安全性を維持する行動も強調した。
 大船渡をはじめ各地の林野火災現場を目にしてきた峠さんは「木はゆっくりとした流れで死んでいく。数年単位の期間で倒れる」と指摘。木が生きているかどうかの判断として、成長量や水分の動きを計測できる「デンドロメーター」を紹介し、より多くの人々が調査に参画する環境づくりに期待を込めた。
 出席者は終始熱心な表情で聴講。会場には、みちのく潮風トレイルに関する資料の紹介コーナーや大船渡の物産品販売、コーヒーショップの出店もあり、好評を博した。
 28日は午前9時からトレイル整備を予定。綾里の綾姫ホールに集合し、綾里峠と綾里崎の各グループに分かれ、CCCのメンバーとともに草刈り、枝の処理、橋や階段のメンテナンス、排水溝づくりなどを行う。