空き家実態調査実施 市が9年ぶりに 来月下旬以降、市全域で
令和7年9月28日付 1面

陸前高田市は、市内の空き家の状況を把握するため、平成28年度以来9年ぶりに、空き家の実態調査を実施する。10月下旬ごろから市内全域で現地調査に入る予定で、利活用に関する所有者への意向調査も行う。空き家は全国的に増加傾向にあり、高齢化、人口減が進行する同市でも大きな課題として挙げられている。空き家数は前回調査の247軒よりも増えていることが見込まれ、所有者らによる適切な管理を推進するための前段階として状況把握に当たる。(高橋 信)
調査は平成28年度に初めて実施し、今回が2回目となる。初回は空き家所有者と、利用希望者を結ぶ登録制度「空き家バンク」創設に先立ち行い、今回は時間の経過に伴い、空き家の全容が変化していることなどを踏まえて実施することとした。
調査は市から業務委託を受けた民間会社が担う。市内全域の住家のうち、水道閉栓・停止情報などから調査対象候補を絞ったうえ、10月下旬にも現地調査に取りかかる。並行して行政連絡員にも協力を依頼するほか、空き家バンクを運営しているNPO法人高田暮舎が収集している空き家情報も参考とする。
調査では全体数に加え、空き家の状態、所有者への意向調査を行う。事業費は約880万円で、国の補助事業も活用している。
管理が行き届かない空き家は、防災、衛生、景観など住民の生活環境に悪影響を及ぼす恐れがある。全国的に増え続けている問題を受け、平成27年、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行された。
これにより、「特定空き家(放置すれば倒壊など周辺に著しい悪影響を及ぼす恐れがある物件)」に認定された空き家について、行政による▽助言・指導▽勧告▽命令▽代執行──の手だてが整えられた。助言・指導による改善が見られず、勧告を受けた放置空き家は、固定資産税の住宅用地特例が解除され、同税が最大で6倍に跳ね上がる。
令和5年には同法が改正され、特定空き家予備軍の位置づけとして、新たに「管理不全空き家」を創設。管理不全空き家も勧告を受けた場合、特定空き家と同様に、住宅用地にかかる固定資産税の特例措置の対象外となることとなった。
こうした状況を踏まえ、市は6年3月、空き家対策をまとめた「市空家等対策計画兼空き家対策総合実施計画(6~15年度)」を策定。特定空き家、管理不全空き家の定義・判断基準、それらの空き家に対する措置の流れを明記した。6年度には高田町の民家1軒を初めて特定空き家に認定し、同特措法に基づき、所有者がいない場合に行う略式代執行による除却(解体)に踏み切った。
実態調査は年度末まで行い、結果は特定空き家や管理不全空き家の発生を未然に防ぐための対策実施に向けた検討材料とする。所有者の意向も聞き、空き家バンクへの登録促進にもつなげたい考えだ。
市住宅政策室の菅野優室長は「所有者にいかに適正な管理をしてもらえるかが今後の課題。その方策を検討するため調査は重要であり、今後、行政連絡員らのご協力もお願いしたい。調査を経て空き家バンクの登録物件増など、空き家の有効活用も図っていきたい」と見据える。