途絶えた「応援歌」復活 大船渡小 運動会や陸上記録会で披露 今後の伝統継承も見据え

▲ 復活した応援歌を威勢良く歌う大船渡小児童ら(25日の陸上競技記録会)

 大船渡市大船渡町の大船渡小学校(堀井秀郷校長、児童145人)は本年度、同校でかつて歌われていた「応援歌」を復活させた。校舎内に掲示された卒業記念パネルをきっかけに、当時の卒業生が声を上げ、在任する教諭らが呼応し再興へ尽力。歌われなくなった時期や期間、理由などは不明だが、本年度の5、6年生55人が第一から第三まである応援歌を覚え、5月の運動会や今月25日の市内陸上競技記録会で披露した。同校では、次世代への伝承を見据え、取り組みの継続を誓う。(菅野弘大)

 

大船渡小校舎内にある応援歌パネル

 同校校舎内の一角に「昭和五十九年度卒業記念」と記された木製のパネルがある。パネルには、第一から第三まである同校の応援歌が刻まれており、歌詞を見ると「三陸の黒潮あびて」「母校のために」など、地域の象徴や母校を思う言葉が並ぶ。小学校で独自の応援歌を持っているのは市内でも珍しいが、いつからか歌われなくなっていた。
 応援歌の復活は、学校活動に協力している昭和34年度卒業生の齊藤賢治さん(77)=末崎町=が令和5年度に同校を訪れた際、このパネルを見つけ、現在は歌われていないことを知ったのがきっかけ。「同級会で集まると、必ず応援歌を歌い出す人がいて、私も小学校時代の思い出として強く残っている。児童らの思い出の一つとなるよう、今の子どもたちの声で再現できないか」と学校に思いを伝えると、堀井校長をはじめ、教諭らも賛同し、昨年度から計画が動き出した。
 齊藤さんの時代は第一だけだったというが、同級生らに協力を呼びかけ、歌にピアノでメロディーをつけた音源を録音し、学校に提供。第二、第三は、在籍する教諭に応援歌を知る卒業生がいたことから、これらをもとに再現を試みた。
 児童らによる練習は本年度から本格化。5、6年生のみで練習を重ね、歌詞に込められた思いや声の出し方、腰を反って歌う独特の姿勢をマスターした。第一から第三の歌詞と「フレーズを赤組、白組に変えて歌っていた」といった卒業生から得られた情報も踏まえ、歌うのにふさわしいシーンを選び、第二、第三は5月の運動会、第一は9月の陸上競技記録会でお披露目することとした。
 25日に三陸町綾里の三陸総合運動公園で開かれた陸上競技記録会では、5、6年生の同校応援団が第一応援歌を高らかに歌い、選手らの活躍を後押し。5年男子のリレーでは、応援歌の思いが届いたのか、選手らがバトンをつないで1位でゴールし、応援席も大いに盛り上がった。堀井校長は「私にも鮮明に覚えている思い出の歌があり、今回と重なる部分があった。ただ、単発では廃れてしまう。先生たちが入れ替わる中でも、歌に込められた思いや愛校心をリンクさせて、歌い継がれればいい」と語る。
 中村唯乃団長(6年)は「(応援歌は)背中を押される歌詞で、とても心強く感じる。応援団の心を一つにして『選手に届け』と歌った。これからも途切れないで、下の世代につないでほしい」と願った。
 同校では、今後も応援歌を歌い継ぐべく、齊藤さんの協力で、児童らが歌う様子の動画、音源を記録。齊藤さんは「その時代の背景が思い浮かんでくるのが歌。応援歌が再び歌われるようになるのは喜ばしいこと。児童らの思い出に残る歌となってくれれば」と期待する。
 応援歌は、YouTube(限定公開、別掲のQRコード)から視聴できる。