存続に向け 早期対応を 再編計画案示された東高・食物文化科 同窓会とPTA 市と市議会に要望書提出(別写真あり)
令和7年10月1日付 7面

県教育委員会の第3期県立高等学校再編計画当初案で、令和10年度に大船渡東・食物文化科の募集を停止する案が示されたことを巡り、同校のPTA(木下彰会長)と同窓会(鈴木昭司会長)は9月29日、大船渡市と同市議会に対し、同科の存続に関する要望書を提出した。保護者や卒業生の立場から、同科の存続に向けて早期に県への働きかけなどを行うよう求めた。今月上旬には、市内各種団体や市民有志らによる署名活動が始まる予定で、同科の存続を求める機運が高まりを見せている。(三浦佳恵)
要望書の提出は同市役所で行われ、木下、鈴木両会長と、署名活動を行う「大船渡東高校・食物文化科をみんなで護る会」の会長に就任した米谷春夫大船渡商工会議所会頭らが出席。市側は渕上清市長、小松伸也教育長らが臨んだ。
木下会長は、保護者の立場から食物文化科の必要性を示し、「ぜひとも存続させてほしい」と渕上市長に要望書を手渡した。
鈴木会長は、「何とか食物文化科を守りたい。市民が一丸となって護る会を立ち上げ、署名活動に広げていく」と決意を語った。米谷会頭は「食物文化科を存続させるには、〝オール大船渡〟で対処していかなくてはならない。存続に向けた運動を強力に進めていきたい」と力を込めた。
市は8月の当初案公表以降、同科の募集停止案に反対する姿勢を明示してきた。渕上市長は「要望については、私どもも同様の考え。関係機関や団体と緊密な連携を取りながら、必要に応じて(10年度の募集停止案が示された)高田高・海洋システム科に関する動きも視野に入れ、陸前高田市などとも意思疎通を図りつつ対応したい」と答えた。
一行はこの後、市議会の伊藤力也議長にも要望書を提出。伊藤議長は9月定例会で議員発議案「『第3期県立高等学校再編計画(当初案)』の沿岸南部地区における大船渡東高等学校食物文化科の募集停止に関する意見書」が全会一致で可決され、速やかに県へ提出した経緯を説明し、「当局とも情報交換し、力を合わせて存続を求めていく」と述べた。
木下会長は、「官民一体で、食物文化科の存続に向けて取り組んでいきたい」と話していた。
要望書には、食物文化科は県内でも数少ない調理師資格の取得が可能な学科だとし、保護者、卒業生、地域住民それぞれの立場から必要性に言及。「一学科にとどまるものではなく、子どもたちの学びと地域の未来、そして地域産業を結びつける教育の柱」と位置付け、護る会とともに存続に向けた活動を進めていく決意を記した。
そのうえで、市には▽県に対し、東高食物文化科の存続を主体的かつ早急に要望を▽子どもたちが地域で学び成長できる環境を守るため、調理師養成機能を確保する体制について、県と協議・検討を▽県立高校の特色ある取り組みについて、市民に広く理解を深めてもらえるよう、積極的な広報・周知活動を──の3項目を求めた。市議会には、同科の存続に向けた市に対する速やかな働きかけなど4項目を要望した。
県教委は第3期再編計画当初案で、同科と高田・海洋システム科を10年度に募集停止とし、同科と食物文化科の調理師養成施設を宮古水産に集約する方向性を提示。同科の家庭の学びは、東高の農芸科学科でコースなどとして存続するとしている。しかし、地域では反対への機運が高まり、護る会では今月上旬にも署名活動を開始したい考えだ。