気仙地区の高校教育体制維持求め── 県教委などへの意見書可決 市議会最終本会議で議員発議 県立高再編案巡り
令和7年10月1日付 1面

陸前高田市議会9月定例会は9月30日、最終本会議が開かれ、令和6年度各種決算6件と発議3件の議案計9件を原案通り可決、認定し、閉会した。発議案のうち、「気仙地区の高等学校教育体制維持を求める意見書の提出」は、県立高校の第3期再編計画(令和8~17年度)当初案に盛り込まれている同市の高田高海洋システム科、大船渡市の大船渡東高食物文化科の募集停止について、市議会として反対の意思を示そうとのもので、今後、県や県教委などに提出する。(高橋 信、7面に関連記事)
県立高校の次期再編計画当初案にかかる発議案は、鵜浦昌也副議長(創生会)が提出。伊勢純(日本共産党)、佐々木良麻(とうほく未来創生)の両議員が賛成者として連署した。
県教委は8月、次期再編計画の当初案を公表。気仙では令和10年度に高田の海洋システム科(定員40人)と、大船渡東の食物文化科(同)をそれぞれ募集停止とする方向性が示された。海洋システム科と食物文化科の調理師養成施設は宮古水産高に集約する考えだが、地元からは反対の声が上がっている。
鵜浦副議長は「案は、少子化・人口減少を背景とした再編計画としているが、地域の基幹産業である漁業や飲食業を支える専門人材の育成機会を失わせる内容。復興と地域振興の流れに逆行するものであり、到底受け入れることはできない」と意見書の内容を読み上げ、賛同を求めた。
採決に先立つ討論では、菅野広紀議員(無所属)が反対の立場から登壇。「(今定例会の)一般質問の答弁で、市長は高校再編に対して強く反対を示した。高田高に対して新たな国際化の視点も重要と述べているが、具体的な内容や筋道は示されておらず、何をもって県教委との交渉に臨むのか、理解に苦しむ」「議会においては、教育体制維持の意見書提出ありきの議論になっているように感じる」などと指摘。「執行当局や市民を含めた産業界との十分な協議を行い、地元自治体が高校教育に果たすべき役割を明確にしたうえで、議会の役割を果たすべきと考える。拙速な意見書の提出は見送るべき」と訴えた。
同発議案を巡っては、議長を除く議員15人による起立採決を行い、賛成12、反対3の賛成多数で可決。今後、知事、県教委、県議会に提出する。
このほかの発議案は▽市こども基本条例▽国道343号新笹ノ田トンネルの早期事業化を求める意見書の提出──の2件で、全会一致で可決。
このうち、こども基本条例は、教育民生常任委(委員長・佐々木一義議員、委員6人)が提出。市の将来を担う子どもを地域全体で支える社会の実現を目指して制定するもので、条例には市、保護者、学校等関係者、地域住民、事業者、議会の役割を明記した。
新笹ノ田トンネル早期事業化を求める意見書は、衆参両院の議長、内閣総理大臣、財務相、国交相、県知事に提出する予定。
一般会計、国保、後期高齢者医療、介護保険の各特別会計、水道事業会計、下水道事業会計の各6年度決算案計6件は、いずれも原案通り認定した。
請願3件のうち、教育民生常任委が審査した「『カリキュラム・オーバーロード』の改善」と「訪問介護報酬の引き下げ撤回と、介護報酬引き上げの再改定」は不採択となり、産業建設常任委が審査した「新笹ノ田トンネルの早期事業化」は採択された。
この日は、任期満了に伴う議会運営委、総務、教育民生、産業建設各常任委の委員選任とそれぞれの委員長、副委員長の互選も行われた。
委員は次の通り。任期は2年。
◆総務常任委▽委員長=藤倉泰治(日本共産党)▽副委員長=佐々木一義(無所属)▽委員=菅野広紀(無所属)伊藤明彦(同)鵜浦昌也(創生会)
◆教育民生常任委▽委員長=佐々木良麻(とうほく未来創生)▽副委員長=大坪涼子(日本共産党)▽委員=小林卓(無所属)福田利喜(創生会)及川修一(無所属)
◆産業建設常任委▽委員長=菅野秀一郎(創生会)▽副委員長=伊勢純(日本共産党)▽委員=木村聡(とうほく未来創生)大和田加代子(無所属)中野貴徳(同)大坂俊(同)
◆議会運営委▽委員長=福田利喜▽副委員長=木村聡▽委員=佐々木良麻、菅野秀一郎、大坪涼子、藤倉泰治