森林災害復旧へ増強 県派遣5人に辞令交付 農林課の職員充実図る
令和7年10月2日付 1面

大船渡市大規模林野火災に伴う森林災害復旧業務に向け、市による県派遣職員5人への辞令交付式が1日、市役所で開かれた。技師1人は市農林課に常駐し、大船渡農林振興センター所属の4人は、状況に応じて複数の職員が交代で業務に当たる。森林災害復旧業務は短期間で広大な面積の実施が求められる中、職員を増強して円滑な推進を図る。
常駐するのは、県沿岸広域振興局土木部の谷澤泰三技師。大船渡農林振興センター林業振興課の渡邉勇一上席林業普及指導員と佐藤鉄将技師、森林保全課の村上尚徳主任主査と髙間舘大斗技師の4人は、業務状況に応じて柔軟に派遣される。
交付式には、谷澤技師を除く4人が出席。渕上清市長は一人一人に辞令書を手渡し、「今回の林野火災では、延焼範囲が広大かつ急峻な地形に及んだ一方、森林災害復旧の事業期間が限られていることから、着実性と迅速性を両立した取り組みが大きな課題となっている」と述べた。
水源涵養や環境保全の観点から、多様な樹種による植林、脱炭素の観点も踏まえた復旧の必要性も指摘。「円滑な推進に向け、これまでの経験や知見を存分に発揮して、お力添えを」と期待を込めた。
これに対し、渡邉指導員は「身の引き締まる思い。森林の再生に尽力する」、村上主任主査は「想定していない課題も出てくると思うが、解決に向けて取り組みたい」、佐藤技師は「当事者性を大切にしながら業務に当たる」、髙間舘技師は「市役所の皆さんと連携し、着実に進めていきたい」とそれぞれ語った。
懇談では、今後は前例が少ない分野での業務が見込まれることなどが話題に。渕上市長は「市はあまり林政の規模は大きくなく、これまで経験がない分、思い切ってできる面もあるのではないか。テストパターンも積極的に挑戦してほしい」などと話し、エールを送った。
市は激甚災害指定に伴う森林災害復旧事業や水源林造成事業を、被災した人工林約1700㌶のうち2分の1超の面積で優先的に進める方針。現在、森林災害復旧事業の活用対象となる約500個人・団体に対し、意向確認を進めている。5人の配属先となる農林課が所管する。
同事業は令和10年度までとなっており、広範な面積で同事業の導入を目指している中、迅速に行うための事業調整などを担う市のマンパワー確保が急務となっていた。これまでも市は、㈱岩手銀行からの企業版ふるさと納税(人材派遣型)寄付を活用した職員を配置。農林課以外から市職員1人を増員したほか、課内異動も行って対応に当たっている。
林野分野にとどまらず、火災発生以降、市は各行政機関などから応援職員の派遣を受けてきた。2~3月には県から現地連絡員(リエゾン)の派遣が生かされてきたほか、保健師による健康相談などの支援に加え、災害対策本部運営や避難所運営、罹災証明書発行事務でもそれぞれサポートを受けた。
陸前高田市や住田町を含む県内27市町村や、宮城県気仙沼市からも職員派遣があり、避難所運営や各種補助金申請、義援金対応などに当たった。このほかにも、自治体間の協定で東京都板橋区や長野県佐久市、神奈川県相模原市の各職員が公費解体業務に当たり、現在は秋田県能代市の職員が水産課で林野火災に関する補助金交付業務を担当している。