稲作復活 地域とともに 「米茶屋やすみじかん」(猪川町) 黄金色の実り おにぎり用の米に 日頃市町内の休耕田活用
令和7年10月3日付 7面

20年以上稲作をしていなかった大船渡市日頃市町内の休耕田でこのほど、猪川町の「米茶屋やすみじかん」(前田広輝代表)で販売するおにぎり用の米となる稲の収穫が行われた。景観向上にもつながる黄金色の「出来秋復活」に向け、地域住民や地元組織などもノウハウを伝え、稲作初挑戦を支えた。関係者は、来年以降のさらなる拡大や、6次産業化につながる休耕田の有効活用などに向け、手応えを感じている。(佐藤 壮)

おにぎりを販売する「やすみじかん」の店内
日頃市町下鷹生地内の市道沿いで先月27日、前田代表(39)が作付けした「ひとめぼれ」の稲刈り作業が行われた。約20㌃の田でコンバインが刈り取る光景を、前田代表や地域住民らが笑顔で見守った。
担い手不足の影響で長年稲作が行われず、一時は大豆生産に取り組んだこともあったが、近年は雑草に覆われる状態が続いていた。地元産にこだわった食材での店舗運営を思い描いていた前田代表は、町内の知人からこの農地を紹介され、耕作を決めた。
土木業にも携わる前田代表は重機を入れ、雑草を除去。水管理に欠かせない畦畔も自ら行い、代かきは地域住民に手伝ってもらった。
初挑戦の稲作は、鷹生地域の人々にも温かく迎えてもらった。「できることがあれば」と、地元の農業委員や県大船渡農業改良普及センターも支援し、電気柵の設置や追肥のタイミングなどを指南。地域住民らが見回って生育を確認し、同地域の中山間組織による共同防除作業も行われた。
今年は記録的な猛暑に見舞われたが、鷹生川の水を掛け流しで使える環境は維持され、五葉山からの恵みを受けて順調に成長。収穫を見守った住民からも「立派な米だ」といった声が飛び交った。
近所に住む佐藤信男さん(90)も「稲の風景が戻ったのはうれしい。この辺は、ずいぶんと減反しているところがある。もっとやってくれる人が増えてくれれば」と語り、目を細めた。
「米茶屋やすみじかん」は、猪川町中井沢地内の主要地方道大船渡綾里三陸線沿いに店舗を構え、今年5月から営業。10種類以上のおにぎりに加え、地元産の蜂蜜を使ったスイーツなどが人気を集める。収穫米によるおにぎりの提供は、今週から本格化している。
前田代表は「皆さんの協力で、初収穫を迎え、粒も大きく、粘りも良い。少しずつ作付面積を広げられるように頑張りたい」と話す。