被災地の今と新たな課題は 復興庁の復興推進委員会 越喜来の2企業を視察(別写真あり)

▲ いわて銀河農園の越喜来農場を視察する委員ら

 復興庁の復興推進委員会(委員長・今村文彦東北大学災害科学国際研究所教授)による現地調査は2日、大船渡市など県内沿岸地域で行われた。今村委員長ら委員6人が来県し、同市では三陸町越喜来の2企業を視察。先進的な技術を導入した水産加工、トマト生産の現場を間近にし、被災地の今を確認するとともに、新たな課題を探った。
 同委員会は、学識経験者や震災で被災した岩手、宮城、福島の各県知事、企業経営者ら15人で構成。現地調査は年に1回行っており、今回は今村委員長、委員の奥野雅子氏(岩手大学人文社会科学部教授)、佐野孝治氏(福島大学理事・副学長)、勢一智子氏(西南学院大学法学部法律学科教授)、関奈央子氏(ななくさ農園・ななくさナノブルワリー)、戸塚絵梨子氏(㈱パソナ東北創生代表取締役社長)が来県した。
 一行は、宮古市社会福祉協議会で被災者の支援状況を確認。三陸鉄道宮古駅から震災学習列車に乗車し、震災伝承の取り組みに理解を深めた。
 大船渡市に入ると、三陸町越喜来の㈲三陸とれたて市場(八木健一郎代表取締役)を訪問。今村委員長は「こちらは非常に先進的な取り組みをしているということで、関心を持って調査をさせてもらう。現状や課題があれば、ぜひ伝えてほしい」とあいさつした。
 その後は非公開で意見交換などが行われ、委員らは、八木代表取締役から同社の歩み、高度な冷凍技術を導入した使い切り凍結刺身パック製品の商品化、今後の展望などを聞いた。加工施設の視察も行った。
 続いて委員らは、㈱いわて銀河農園(橋本幸之輔代表取締役)の越喜来農場を視察。同社の末田恭平取締役農場長が農場内を案内した。
 越喜来農場は今年5月に完成し、栽培面積2・43㌶は県内最大規模を誇る。ここでは糖度が高いミニトマト「恋するカリーナ」を生産し、地元のスーパーをはじめ、関西圏にまで出荷している。
 末田取締役は、「生産性が最も高く、植物にとって快適な環境を保つ栽培管理を行っている」などと述べ、日照の少ない冬季でも安定栽培が可能なLEDによる補光設備といった最新技術を紹介。委員らは農場のさまざまな機能を目にし、説明に聞き入った。
 調査を終え、取材に応じた今村委員長は、視察した二つの企業に関し、「いずれも新しい産業だったり、人づくりということで非常に先進的な取り組みだった」と振り返り、「今後は気候変動や、いろんな経済、社会の変化がある。変化に応じた工夫が、それぞれの最新技術にあると思う」と高く評価した。
 そして、「震災から14年半がたち、新たな課題が生まれてくる。それに対し、地域でどのような工夫をして取り組んでいるのか、いい事例として推進委員会でも報告をしたい。今後は国としても、公的な行政としても、どのような役割がいいか協議をしていきたい」と語った。