地域見守ったご神木に別れ 加茂神社 松くい虫の被害受け伐採(別写真あり)
令和7年10月5日付 8面

大船渡市大船渡町に鎮座する加茂神社(荒谷貴志宮司)のご神木であるマツが、松くい虫による被害を受けたために伐採された。3日に総代会(及川千春会長)の会員らが見守る中で作業が行われ、関係者は長年にわたり神社や地域を見守ってきたご神木に別れを告げた。(清水辰彦)
同神社は昭和30年、旧大船渡中学校校舎の校庭拡張などに伴って大船渡町字明神前地内から現在の場所に移転された。関係者らによると、ご神木となっているマツは、その頃にはすでに存在していたという。
高さ7~8㍍で、剪定や周囲の草刈りなど総代会がこまめに管理してきたが、2~3年前から松くい虫による被害が確認された。薬剤を散布したり、枝を切ったりと応急処置をしてきたが、今夏で一気に症状が悪化し、全体が枯れてしまった。
3日は、総代会や伐採を行う気仙地方森林組合の職員が参列して安全祈願が行われた。総代がご神木にお神酒をかけ、塩をまいてからしめ縄を外し、二礼二拍手一礼で最後の「お別れ」を済ませた後、伐採作業に移った。
荒谷宮司(59)は「細かく管理していたが、突然のことで残念だ。長年、見守ってくれて感謝している」と、赤褐色に変色した松を見上げた。
総代たちはさみしげな表情を浮かべて作業を見守り、切り倒されたマツが運ばれていくのを惜しんだ。総代らが伐採後に年輪を数えたところ、およそ130年生きてきたことが分かった。
総代会では境内にツバキやシダレモモ、サツキなどを植えて「鎮守の森」を育てており、年間通してさまざまな花が咲く環境を目指している。このほか、境内にはイチイが10本ほどあり、遠い将来、ご神木となるよう丁寧に管理している。
及川会長(79)は「長い年月をかけて育ってきたもので、神社や氏子を見守ってきたご神木が枯れてしまい残念な思いだ。次のご神木となるイチイの木など、いろんな木を植えているので、育ったらぜひ見に来てほしい」と、〝次世代〟の木々に願いを込める。