命を守る行動 改めて確認 避難者把握システムの実証実験も 市防災訓練 震災クラスの地震津波想定(別写真あり)
令和7年10月7日付 1面

大船渡市と大船渡地区消防組合による令和7年度防災訓練は5日、市内全域で行われた。平成23年の東日本大震災や令和4年に県が公表した最大クラスの地震津波と同程度の災害を想定し、自主防災組織などでの避難をはじめ、市災害対策本部設置、県の避難者把握システムを活用したLINE(ライン)の実証実験、陸上自衛隊との連携といった各種訓練を展開。市民ら5585人が参加し、震災や2月に発生した大規模林野火災の経験、教訓も踏まえながら、命を守る行動を改めて確認した。(三浦佳恵)
市民ら5585人参加
訓練は、命を守る住民自身の行動や初動体制の構築、防災関係機関との連携、情報伝達等の確認を通じ、津波発生時の安全・迅速な避難体制の確立などを図ろうと毎年行っている。
今年は、「10月1日にマグニチュード7・3、最大震度5弱の地震により、『北海道・三陸沖後発地震注意情報』が発表された中、同5日午前7時30分ごろに三陸沖を震源地とするマグニチュード9・0、震度6弱の地震が発生。県沿岸に大津波警報が発表され、市は避難指示を発令。市内各地で家屋の損壊、停電、断水等の被害が確認され、地震による建物火災も発生し、延焼拡大の恐れがある」との想定で行われた。
市の防災行政無線やLINE、エリアメールなどで大津波警報発表に伴う避難指示が出されると、各地では市民らが高台にある避難場所に移動。自主防災組織では、住民の避難誘導や避難者数の確認などに当たった。
このうち、盛小を避難場所とする旭町自主防災組織では、避難指示を受けて地域住民ら約80人が続々と集まった。住民らは班ごとに避難者名簿を作成し、スムーズな避難者数などの把握に努めた。
旭町地域公民館の熊谷利彦館長(71)は、「旭町は高台にあるので津波被害は考えにくい場所だが、最近は想像を超える災害が各地で起きており、林野火災が発生すれば避難が必要。日頃からの備えをしっかりしておきたい」と訓練を振り返った。
同校体育館では、県の避難者把握システムを活用した避難者受け付けの実証実験を実施。一般的に、避難者の情報は紙に記入して名簿を作成し、管理をするが、今回の実験では、LINEアプリによるデジタル受け付けにより、受付時間の短縮や管理作業の効率化などが図られるかを確認した。
参加した地域住民らは、スマートフォンで県LINEアカウントの「友だち登録」から氏名などを登録して受付時に読み取る事前型か、会場で専用のQRコードを読み取り、氏名などの情報を登録する現地型で受け付けを済ませた。
盛地区公民館長を務める船山良忠さん(77)は、「名前を書かなくても、すぐに自分の情報が登録されるので便利。有事のときには、地区公民館としても盛町民の安全情報の確認が大事な役目であるだけに、地域との情報共有もできるようにしてもらえれば」と導入に期待を寄せた。
登録方法などが分からない人には、県や市の担当職員がサポート。スマートフォンを持っていない人、LINEを利用していない人向けには、代理登録が行われた。県によると、今後も実証実験を重ね、来年度以降の社会実装を目指すという。
盛小ではこのほか、陸上自衛隊岩手駐屯地東北方面特科連隊第2大隊と連携した給水、炊き出し訓練も展開された。住民らは給水車から水をくむ体験に挑戦し、隊員らが炊き出ししたカレーライスを味わった。救急車や野外炊具などの展示も市民らの関心を集めていた。
大西慶第2大隊長2等陸佐(42)は、「日頃から市と連携強化を図っており、大規模林野火災の際にも対応に当たった。訓練への参加や展示などで活動を知ってもらうことが防災にもつながる。今後もこうした訓練に積極的に参加していきたい」と語った。
市防災管理室によると、この日は一般(自主防災組織活動含む)が4807人、行政や民間事業所などは38機関から計778人と、昨年度並みの人数が参加。渕上清市長は「陸上自衛隊との連携、実証実験のような新たな取り組みも行い、高齢者や家族連れなどが参加して実のある訓練になった。実証実験では、よりスピーディーな避難者の把握につながり、デジタルを活用したシステムの導入に努めたい」と話していた。