迫る期限 増える相談 大規模林野火災 森林災害復旧事業の意向調査17日まで 市役所農林課で随時対応

▲ 綾里の田浜地域で開催された相談会

 大船渡市大規模林野火災の森林災害復旧事業に向けた意向確認の期限が17日(金)に迫る中、被災した山林所有者らから市などへの相談が増えている。市農林課では、電話や来庁による相談に随時対応。所有者が多い地域においては、自主的に相談・研修の場を設ける動きもあり、事業への共通認識を深めるだけでなく、所有者の悩みや、将来を見据えた不安も浮かび上がる。気仙地方森林組合も9日(木)から座談会を赤崎町と三陸町の合わせて3会場で開催する。(佐藤 壮)

 

自主的な相談・研修の動きも

 

 市は激甚災害指定に伴う森林災害復旧事業について、被災した人工林約1700㌶のうち2分の1超の面積で優先的に進める方針。先月中旬、事業の活用対象となる約500個人・団体に対し、意向確認の書類を送った。
 市農林課には、1日数十件のペースで、書類の記入や事業に関する問い合わせが寄せられている。佐藤雅基課長は「悩んでいる方はいると思う。申請期間が短く申し訳ないところもあるが、分からないことがあれば、積極的に相談いただきたい」と話す。
 所有者からの問い合わせは同課林業係(℡27・3111内線337、338、339、340、353)で対応している。
 市は意向確認を踏まえ、11月に取りまとめる方針。森林再生は中長期的な視点が求められる一方、確認を急がざるを得ない理由がある。
 計画に基づく被害木等の伐採や搬出は災害発生年度を含む4カ年度以内の9年度まで、跡地造林は同じく5カ年度以内の10年度まで。今年2月26日の火災発生から実質1カ月程度の6年度も、1カ年と数えられる。平成以降最大の延焼面積に加え、既存制度に基づく期間の制約も、難しい判断に影響を及ぼしている。
 こうした中、所有者が多い地域では、住民による自主的な相談会開催の動きも見られる。三陸町綾里の田浜はまゆり会館で今月6日夜、約20人が集まった。意向調査の回答に不安や悩みの声が多く聞かれることから、住民が被災者の支援活動にあたる団体に相談して実現した。
 説明役を務めたのは、森林総合監理士(フォレスター)の平林慧遠さん(39)=住田町。同事業を行う場合の伐採や造林を行う流れに加え、森林保険加入や下刈りをはじめとした所有者負担の見込み、丸太販売による収益の可能性などを解説した。
 地面から高さ2㍍程度が延焼した樹木について、将来的に材料として使える可能性に言及した一方で「今は葉が緑色でも、そのまま生きるか死ぬかは、1年か2年後に分かるといわれている。今後、木材として価値が下がり、将来は売りたくても厳しい状況も予想される。今回のような伐採にも補助する事業は、なかなかない」と指摘した。
 所有者が費用をかけずに、復旧事業を見送る選択にも理解を示した。また、市内に出張所機能を構えた青葉組㈱(本社・東京都)が、企業協賛を生かすなどして所有者の費用負担を求めず管理する事業提案にも触れた。
 説明を聞き、持参した意向調査の書類に記入した70代女性は「1人暮らしで、将来のこともあり、どう書けばいいか分からなかった。こういった場はありがたい」と語った。
 すでに意向調査に回答した80代男性は「対象は5㌶以上のまとまった整備を行える区域とあるが、この地域でそれぐらいを持っている人は少ないのでは。地域の中で、意向を確認できる場もあればいいが。森林災害復旧事業を考えているが、森林保険などの負担は厳しい」と話した。
 自主的な相談会は、先月29日に綾里の野々前地域でも開催された。今月11日(土)午後4時からは、綾里の綾姫ホールで予定。申し込みは不要だが、意向調査確認の資料持参を求める。
 また、気仙地方森林組合は9日から森林復旧にかかる座談会を開く。同日は越喜来の甫嶺公民館(午後2時から)と赤崎町の蛸ノ浦地区公民館(同7時から)、14日(火)は綾姫ホール(同)で、被災森林の所有者らの出席を呼びかける。問い合わせは同組合(℡46・2621)へ。