避難要支援者名簿更新へ 障害者、高齢者ら対象 登録者数188人 市が本年度作業に本腰 災害弱者守る共助構築目指す
令和7年10月11日付 7面

陸前高田市は本年度、障害者や高齢者など災害時に自力で避難するのが困難な人の個人情報をまとめた「避難行動要支援者名簿」の更新作業を行う。登録者は4月1日現在188人。記載する情報に変更があれば登録者から連絡を受け、随時修正する流れだが、情報が登録時のままのものが多い状況を踏まえ、市が全登録者に変更点がないか照会し、来年度、更新版の名簿を支援関係者に提供する。同時に、障害者手帳を持つ人や要介護認定者らに案内を出し、登録希望者の掘り起こしも進める。14年7カ月前の東日本大震災の教訓を踏まえて全国で始まった要支援者名簿の作成。災害弱者の命を守る共助の構築に向け、市は登録者を対象とする個別避難計画の策定にも努める。(高橋 信)
東日本大震災時、避難が遅れたため、津波の犠牲となる災害弱者が多かった課題を受け、平成25年に災害対策基本法が改正された。これにより高齢者や障害者らをリスト化した避難行動要支援者名簿の市町村による作成が義務づけられた。
市は26年、名簿登録など要支援者に対する支援制度を創設。名簿の記載内容は、名前や性別、住所、連絡先などの基本的な情報に加え▽傷病履歴▽服用薬▽かかりつけ医療機関▽避難生活で特に配慮が必要な事項──など。今年9月、制度の要綱を改正し、新たに避難支援者、避難手順、避難場所などの情報も登録申込書に記載するよう改めた。
名簿の情報変更は、登録者から連絡をもらい直す態勢だったが、大半が平成30年度ごろから変わっていないため、すべての登録者に変更点があるか確かめるべく、年内に返信用封筒付きの文書を郵送する。同時期に要支援・要介護認定者、障害者手帳を持っている人に登録の案内文書、申込書を送る。
更新した名簿は、来年度初めに自主防災組織、自治会、民生委員・児童委員、市社会福祉協議会、消防・警察機関に提供する。
個別避難計画は、災害時に要支援者が「誰と、どこへ、どのように」避難するのかを個人ごとに計画し、本人、行政、地域などで共有するもの。令和3年の災害対策基本法改正で、市町村による計画の作成が努力義務化された。
市はこれまで、要支援者名簿に登録した人の次なるステップとして、個別避難計画策定を推進。しかし、計画作成者は4月1日時点で63人と、名簿登録者(188人)の33・5%にとどまる。おのおの支援者を確保する必要があり、責任の重さから個人名の明記を敬遠する傾向があるなど、マッチングが容易でないことが要因の一つとみられる。
市が9月に要綱を改正し、要支援者登録名簿の申込書に支援者名の記載欄を新設したのは、そのまま個別避難計画に反映させることを見越した対策。ただ要支援者が自ら支援者を確保するのは困難であることが想定されるため、市は民生委員や自主防災組織などとともに確保策を検討していきたい考えだ。
市福祉課の畠山幸也課長補佐は「実行性のある計画にすることが重要。非常に難しい作業となるが、地域の関係者らと連携しながら推し進めたい」と見据える。