復旧後の活用を考える 旧吉田家住宅主屋 記念講演会とシンポジウム(別写真あり)
令和7年10月12日付 8面

陸前高田市気仙町の県指定有形文化財「旧吉田家住宅主屋」完成記念講演会と、同主屋の日本遺産「みちのくGOLD浪漫」構成文化財認定記念シンポジウムは11日、高田町の市コミュニティホールで開かれた。登壇した有識者らが、東日本大震災で全壊した主屋の復旧に至るまでの道のりや歴史を再確認し、今後の活用にかかる展望についての思いを来場者と共有した。
同主屋は震災で全壊し、被災部材などを使った復旧を経て今年5月に開館。7月には宮城、岩手両県7市町の産金史を伝える文化庁の「みちのくGOLD浪漫」の構成文化財に加わった。
記念講演会とシンポジウムは陸前高田市教委が主催し、県教委と日本遺産みちのくGOLD浪漫推進協議会が後援。地域住民60人余りが来場した中、開会にあたり、山田市雄教育長が「大震災を乗り越えた地域力を生かし、未来へ発展する象徴の一つとして、気仙地域の歴史的価値を再認識したい」とあいさつした。
第1部では、建築装飾技術史研究所長で、同主屋復旧委員会のオブザーバーを務めた窪寺茂さんが「旧吉田家住宅主屋の復旧への道のりと将来的展望」と題して講演。
窪寺さんは、震災で被災した同主屋の文化財的価値や復旧されるに至った経緯、流れた部材の回収と補修作業、調査などの様子について説明。復旧された主屋は、伝統的大工道具で加工された〝在来材〟と、現代大工道具で加工された〝新規材〟が融合しており、「部材に残る建築情報の奥行きが広がっている点が、この建築の面白みではないか」「新材と前の部材を目で見て分かるようにするという教育委員会の考えは卓見だった」と評価した。
また、「文化財修復の世界観」として、人と資材、技術によって文化財が修復され、日本の歴史・文化や社会・経済に反映される流れの大切さも強調した。
第2部のシンポジウムでは、「花咲け〝みちのくGOLD〟浪漫」と銘打ったパネルディスカッションを実施。宮城県涌谷町教委の福山宗志生涯学習課長がコーディネーターを務め、窪寺さんと、平泉文化遺産センターの千葉信胤参与、陸前高田市立博物館前館長の松坂泰盛さんの3人がパネリストとして、同主屋の歴史的背景に触れながら、今後の活用に焦点を当てて考えを述べた。
この中で、窪寺さんは「(震災後に)吉田家住宅の部材を一生懸命回収したというのは、吉田家と地元地域の関わりが知られていたからこそ。今後、その関わりが分からなくならないよう、吉田家がどういう存在であるのか、継続的に企画展を開くなど目に見える取り組みが必要」と呼びかけた。