防災は「近助」から 外国人も対象に 生徒主体でセミナー開催 住田高(別写真あり)
令和7年10月14日付 1面

住田町の県立住田高校(伊藤治子校長、生徒64人)が主催する防災セミナーは13日、町役場町民ホールで開かれた。「共生のまち住田~はじまりは近助から~」をテーマに、2市1町の住民や海外出身者らが集い、寸劇やグループワークを通してそれぞれの立場から災害時に「できること」を考えた。発災時には言葉の壁や文化、宗教の違いも課題となる中、互いを理解しながら支え合う環境をはぐくみ、有事の際に近しい人同士で助け合う「近助」の重要性を、生徒が主体となって参加者に訴えた。(清水辰彦)
同町内在住の外国人は、令和6年12月31日時点で137人。町の総人口4681人に占める割合は2・9%で県内トップとなっており、在住外国人の多くは技能実習生で人口減少が進む地域において企業の貴重な担い手にもなっている。町では、〝一住民〟として地域を支える外国人と地元住民の交流活性化、外国人が生活するうえでの障壁やニーズを把握し、異なる文化的背景を持つ外国人の視点もまちづくりに生かしていこうと、昨年度から「多文化共生事業」を展開している。
こうした中、陸前高田市在住で同市防災マイスターの資格を持つ同校の金野恵人さん(2年)が、外国人にも防災について知ってもらおうと、町独自教科「地域創造学」のアクションの一環として今回のセミナーを企画。これに1、2年の生徒有志も賛同した。
この日は町内外から約30人が参加。このうち香港、ベトナム、台湾出身者も5人が出席した。
セミナーでははじめに、生徒が寸劇を披露。外国人が地震発生時に戸惑う場面を演じたうえで、参加者はグループごとに「日本人にできること」「外国人にできること」について考えた。グループワークでは、海外出身者からは「日本のサイレンが分からない」「どこに逃げればいいか分からない」などの声もあり、これを受けて日本人側からは「近くに外国人がいたら声を掛けて一緒に避難する」といった意見が挙がった。
続いての寸劇では、外国人に〝優しい日本語〟で声を掛けて高台に誘導する例が示され、「避難は逃げる、避難所は逃げる所、炊き出しはご飯、土足厳禁は靴を脱ぐ」など、分かりやすい言葉を使うことも大事と生徒が呼びかけた。
金野さんは結びに、日頃から「こんにちは」「ありがとう」「お疲れさま」と言葉を交わす大切さを強調し「それが、いざという時にあなたを助けてくれる」と力を込めた。
町内で働くベトナム出身のグエン・ティ・トゥイ・チャンさん(25)は、令和3年に来日。ベトナムでは地震を経験したことがなかったといい、「日本で初めて地震を経験した。怖かったが、どうすればいいか分からなかった」と来日当初の体験を語った。今は、地震発生時にはまずは頭を守るなど対処が身についてきたといい、今回のセミナーを「楽しかったし、いろいろなことを勉強できた」と振り返った。
来日3年目となる大船渡市在住の団体スタッフ、チョウ・キエイさん(37)=香港出身=は、今年7月末、ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする巨大地震の発生に伴い津波警報が発令された際にとまどうことがあったといい「事前にいろいろと勉強しておくのが大切だと思った。きょうはグループで分かち合いながらの学びとなり、素晴らしい機会になった」と話していた。
金野さんは「コミュニティーあってこその防災であり、共生のまちづくりだと思っている。セミナーが、外国の方と日本人をつなぐ機会になってくれれば」と願いを込めた。