秋のクマに警戒を 県内で人的被害相次ぐ 気仙でも緊張感高まる

▲ クマへの注意事項などを記載した市広報を手にする職員=陸前高田市

 県内でツキノワグマによるとみられる人的被害が相次いでおり、気仙地区でも緊張感が高まっている。陸前高田市内における本年度の目撃情報は10日時点で23件と、6年度全体の19件をすでに上回っている。市内での人的・物的被害はないが、市担当者は「クマを引き寄せない対策を」と注意を呼びかける。市は年内の完成を目指し、緊急銃猟制度を含めた対応マニュアルの作成も進めている。(高橋 信)

 

 本年度の同市内の目撃情報(10日時点)を町別にみると、矢作の9件が最多。以下、横田4件、竹駒、気仙各3件、小友2件、米崎、広田各1件と続き、高田はゼロとなっている。合算した23件は、出没が多かった5年度(36件)の同時期(24件)並みの多さとなっている。
 県内では7月、北上市和賀町の民家内で80代の女性がクマに襲われて死亡。今月8日には同市の山林でかみつかれた痕やひっかき傷が複数ある男性1人の遺体が見つかった。さらに10日、雫石町の林でクマに襲われたとみられる男性1人が死亡しているのが発見された。
 陸前高田市役所で9日に開かれた市林業振興協議会でも、議事後の意見交換で委員らから「最近、クマの出没が多い」などと不安の声が複数聞かれた。
 市は目撃情報が寄せられるたびに防災行政無線やSNSで情報を流している。市広報ではクマと遭遇しないための対策や注意点などを載せ、注意を促している。
 また、改正鳥獣保護管理法の施行に伴い、9月1日からクマなどが日常生活圏に出没した際に特定の条件下で銃を使用して捕獲することができる「緊急銃猟制度」が始まった。
 市は同制度の運用のあり方などをまとめた対応マニュアルを作成中。捕獲従事者が装備する盾やクマ撃退スプレーなど備品の購入も計画しており、マニュアルと合わせ、年内までに安全に従事するための体制を構築する。
 市農林課林政係の担当者は「まずは誘因物の除去や小屋の戸締まりなど、クマを寄せ付けない対策を徹底してほしい。早朝や夜間はクマに遭遇する可能性が高くなるため、一人で行動する際は留意を」と呼びかけている。