倒木可能性〝見える化〟を 大規模林野火災 生育把握へ「デンドロメーター」設置

▲ みちのく潮風トレイルのルート沿いで電動の「デンドロメーター」を設置

 大船渡市大規模林野火災の延焼域にある樹木が生育するかどうかへの関心が高まる中、三陸町綾里のみちのく潮風トレイルルート沿いで、倒木可能性調査が始まった。黒く焦げた跡が残る樹木の幹に、成長量や水分の動きを計測できる「デンドロメーター」を設置。倒木や枝の落下といった危険性への対応に役立てるだけでなく、より広範囲の延焼区域での被災木の成長予測につなげる応用など、今後の成果が注目される。(佐藤 壮)


綾里のトレイルルートで調査
延焼域での予測など応用にも期待


 この調査は、地域DMO(観光地域づくり法人)の一般社団法人大船渡地域戦略(志田繕隆理事長)による取り組み。同法人は、みちのく潮風トレイルを巡るハイカーの受け入れ体制整備などを進めている。
 林野火災の現場では一般的に、幹部分だけが焦げ、緑色の葉が残っていても、数年後に枯れる樹木が発生する。幹の表面が低い位置にあっても360度焦げると、水分が木全体に行き渡るのが難しくなり、数年後に枯れるケースも見られるという。
 みちのく潮風トレイルルートのうち、赤崎町~三陸町綾里の約20㌔で、トレイル沿いの木々にも大規模林野火災の延焼が及んだ。これを受け、地域戦略は長期的な視点で安全確保やルート沿いの情報共有につなげようと、林野火災を受けて寄せられた寄付金を活用して取り組む。
 さらに、国土緑化推進機構「緑と水の森林ファンド」の助成を受けた。森林科学分野を専門とする宮崎大学農学部の篠原慶規准教授や、大規模林野火災以降、大船渡に何度も足を運ぶ京都大学防災研究所水資源環境研究センターの峠嘉哉特定准教授の協力を得て進める。
 15日に設置したのは、綾里崎灯台付近から立石山に上るルート沿いで、尾根部分に当たる。一帯は市有地の天然林で、1㍍超の高さで幹が黒く焦げているマツなどを選んだ。デンドロメーターは、幹部分の周囲の長さを計測するもので、電動器具と手動の計44機を設置した。
 樹木の幹は、春から夏にかけての成長だけでなく、水分を根から吸い上げて葉から放出するなど1日だけでも変化があり、電動では10分単位で計測が可能。手動の場合は、数カ月単位での変化を確認することにしている。
 林野火災現場でのこうした精密な計測調査は全国的にも例がないといい、取り組みの行方が注目される。篠原准教授は「死んでいく木は倒木に加え、根が弱ることで土砂災害の危険性が高まる。どの木が生き残り、どの木が弱っていくかの調査であり、長い期間をかけて行いたい。森自体がどうなっていくかといったデータや、木の種類や直径、成長度の関係式がつくれれば、予測にも生かせるのではないか」と話す。
 峠特定准教授も「トレイルルート以外の人工林も、被災木を『切る』『切らない』の選択に迫られる中、どういう状態にあるかを確認するモニタリングの技術が必要。災害を過ぎ去ったものにせず、記録することにもつながる。専門家以外でも状態を把握できる指標の一つになり、山への関心につながる」と、調査の意義を語る。
 地域戦略は今後、調査地を増やしていく方針。志田理事長は「調査をすることで、ハイカー向けに倒木の可能性は低いといった前向きな情報を提供することにもつながる。定期的な確認など、息の長い取り組みであり、調査に参加するツアーなども企画できれば」と、今後を見据える。


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 みちのく潮風トレイルルートのうち、綾里峠周辺は森林災害復旧事業のため、来年3月末まで通行できない。