岩手三陸の発展へ議論 13市町村の長ら 陸前高田で連携会議 ALPS処理水放出など巡り国担当者に要望も
令和7年10月22日付 7面

気仙3市町を含む本県沿岸の13市町村で構成する岩手三陸連携会議(議長・佐々木拓陸前高田市長)は20日、同市高田町のキャピタルホテル1000で開かれ、三陸共通の課題や地域を盛り上げる足並みをそろえた取り組み、国への要望事項について確認した。東京電力福島第一原発のALPS処理水海洋放出に関する現状や、第2期復興・創生期間後の見通しについて、国の担当者らから説明を受け、自治体側の意見・要望も伝えた。(高橋 信)
構成自治体の首長らが出席。議長の佐々木市長は「第2期復興・創生期間が終了し、震災からの復興は来年度から新たなステージに入る。今後も誰一人取り残さずに復興を進めるとともに、人口減少や産業振興などのさまざまな課題に対応することが重要」とあいさつした。
議事では、同会議の取り組み状況や国への要望、ラグビーリーグワン2部の日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)応援イベント実施など4議案を協議し、いずれも原案通り承認した。
国への要望項目は▽日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震に係る津波防災対策への財政支援▽過疎対策事業債の償還期限延長▽第2期復興・創生期間終了に伴う財政支援などの継続──の3点。11月13日(木)に総務省や内閣府などに提出する予定となっている。
釜石SW応援イベントは、三陸地域を拠点にする唯一のプロスポーツチームを同会議の構成市町村が一体となって応援することで地域をともに盛り上げる契機とするもの。12月に釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで行われるホームゲームに合わせて応援・交流イベントを開催する計画で、今後、日程や内容を固める。
議事後は、三つのテーマについて情報交換を行った。このうち、ALPS処理水海洋放出に関しては、内閣府の担当者が処理水処分に係る対策の進ちょくや今後の取り組み方針を、農水省の担当者が中国向け水産物の輸出再開に向けた今後の流れを説明した。
佐々木市長は、水産物を使った医薬品などの原料製造を手がける陸前高田市内の事業者が中国による禁輸措置の影響を受けていることを取り上げ、「水産物ではなく、医薬品であるにも関わらず止まっている。しっかりと対象外であるということを政府間ベースで明確に確認したうえで、業者に指示してほしい」と要望した。
農水省の担当者は「中国側がHSコード(輸出入統計品目番号)上で水産物、またはその関連製品と指定している物の範囲は広い。市や事業者側が医薬品と思っていても、原料に水産物が入っている場合は水産物とカウントしている可能性がある。ただしそうではなく、水産物でないものは本来止まらず輸出できる。政府としても大使館経由でサポートしており、輸出しようとしている事業者などから改めて農水省の相談窓口に連絡をしてほしい」と理解を求めた。
また、復興庁岩手復興局による令和8年度予算の概算要求を巡る情報交換では、佐藤信逸山田町長が本年度で国の第2期復興・創生期間が終了することを踏まえ、「コミュニティー形成支援事業が終わることとなるが、自治体単独で費用を負担して継続するのは限界があるということを要望としたい」と求めた。
岩手復興局の保科太志局長は8年度予算要求の中にコミュニティー形成支援事業が盛り込まれていないことに触れたうえ、「コミュニティー形成支援は中長期的な対応が必要と考えており、各自治体からの相談に個別に対応し、意見を丁寧に聞きながら、関係省庁や県と連携して対応していきたい。きょうの意見もしっかり本庁に伝える」と回答した。
岩手三陸連携会議は、持続可能な三陸沿岸地域の形成に向け、人口減少対策、定住促進、震災復興など必要な課題を市町村が共同で解決していくことを目的に、平成28年度に設置。令和8年度の議長は小野共釜石市長、副議長は遠藤譲一久慈市長が就いた。