2校2学科の存続など求める 県立高校再編計画当初案受け 県教育長に要望書を提出 気仙含む沿岸南部地区5市町が連名で 

▲ 気仙など沿岸南部地区の5市町が県教委へ要望書を提出=盛岡市

 県教育委員会が公表した「第3期県立高校再編計画」(当初案)を巡り、気仙3市町と釜石市、大槌町の沿岸南部地区5市町は21日、県教委の佐藤一男教育長に要望書を提出した。要望内容は、当初案で令和10年度の募集停止が示された大船渡東・食物文化科(定員40人)と高田・海洋システム科(同)の存続と、同地区に医療人材育成(医学部等進学)コースを設置することの3点。来月中旬に同計画の修正案公表が予定されている中で、5市町は地域の高校が持つ役割の重要性や地域課題を踏まえながら、県教委に対応を求めた。(三浦佳恵)

 

 県教委が第3期県立高校再編計画の土台として策定した「県立高校教育の在り方~長期ビジョン~」では、県立高校配置の地区割を変更。気仙3市町は「気仙ブロック」から、釜石市と大槌町を合わせた「沿岸南部地区」に見直された。
 当初案において、同地区内で再編対象となったのは気仙の2校2学科。それぞれ10年度で募集停止とし、海洋システム科と食物文化科の調理師養成施設は宮古水産に集約する方針。同科の家庭の学びは、大船渡東の農芸科学科でコース等として維持するとしている。
 今回の要望活動は、8月に陸前高田市内で開かれた「今後の県立高校に関する地域検討会議」で各市町が当初案に対して寄せた意見について、改めて沿岸南部地区として求めようと、修正案公表を前に実施。
 要望書の提出は盛岡市の県庁で行われ、大船渡市の渕上清市長、陸前高田市の佐々木拓市長、住田町の松高正俊教育長、釜石市の高橋勝教育長、大槌町の菊池学副町長が訪問。渕上市長が佐藤教育長に要望書を手渡し、その後の懇談は非公開で行われた。
 要望内容は3項目。一つ目は、大船渡東・食物文化科に関するもので、同科が地域の産業や食文化などと結び付いた即戦力となる人材輩出に寄与しているなどの役割を挙げ、「同科を失うことは、地域における人材育成や産業振興はもとより、地域づくり全体に影響を及ぼす」として、維持・存続を求める。
 二つ目は、高田・海洋システム科についてで、「東日本大震災からの復興に取り組む沿岸南部地区の重要な産業である水産業・海洋関連事業における人材育成において中核的な存在」として、存続を要望。併せて、水産業のグローバル化、多様化する海洋関連事業の将来方向を踏まえた魅力化、特色化を図るとともに、震災の教訓伝承など、同地区特有の重要課題にも取り組むよう言及している。
 三つ目は、医師の不足や偏在による同地区の医療体制を取り巻く課題を踏まえて設定。「地域が医療機関と連携しながら、医師等の地域医療を支える人材を育成することが重要」として、同地区に医療人材育成コースの設置を求める。この要望については、地域検討会議で釜石市などから意見が出されていた。
 要望活動終了後、渕上、佐々木両市長が報道陣の取材に応じた。
 5市町で要望を行った経緯に関し、佐々木市長は「沿岸南部地区は震災もあり、県内の地区の中でも不利な条件がある。産業や医療をよりよくしていくには、教育が一番大事。沿岸南部で一丸となり、お願いをしようと行った」と説明した。
 渕上市長は、「食物文化科は調理師免許を取得できるという強い特色があり、希望者も一番多い。農芸科学科もあり、農作物を作ることから一連の動きとして調理につなげられる特色もあるとして、ぜひ存続をと要望した」と活動を振り返り、「(要望活動に対し)佐藤教育長からは、『いずれ検討中』との回答だった。市内では、食物文化科の存続を求める民間の署名活動も行われている。産業界も含め、地域で要望を強めていきたい」と述べた。
 佐々木市長は、気仙両市などで大手水産会社の養殖プロジェクトが進んでいることなどを踏まえ、「中核的な担い手となる人材を養成する学科が消えてしまうのは、せっかく進もうとする芽を摘んでしまう。ぜひ、地域に残してとお願いした」と語り、国際交流、地域での学び、防災学習などの特色を盛り込み、魅力化を図る必要性も示した。