デジタル活用した防災システムの「共創」目指す 東京大、NTT子会社とDX推進 市が来月、産学官連携協定締結へ
令和7年10月24日付 1面
陸前高田市は11月10日(月)、東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター、㈱NTTDXパートナーと、デジタル技術を活用した防災システムの検討・研究に関する産学官の連携協定を結ぶ。市が全国に先駆けて導入した災害情報伝達システム「シン・オートコール」の改良に加え、3者のノウハウを生かして新たなシステムの「共創」を目指す。東日本大震災の教訓を踏まえ、防災・減災のまちづくりを手がける市が新たなパートナーとスクラムを組み、防災分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進する。(高橋 信)
協定の締結式は東京大本郷地区キャンパスで行われ、同大大学院の目黒公郎・情報学環長、NTTDXパートナーの長谷部豊代表取締役、佐々木拓市長が出席する予定。有効期間は令和10年11月までの3年間で、その後は原則1年ごとに自動更新される。
協定の主目的は、シン・オートコールの機能強化と、新たな防災システムの検討・研究の二つ。
シン・オートコールは、災害時に支援が必要な市民らに対し、避難情報を一斉に電話発信する「オートコール」と、安否状況を把握する人工知能(AI)機能を組み合わせたシステム。
市はシステム運用上の課題などを2者に情報共有し、東京大は改良点の調査・研究、助言を行う。NTTDXパートナーは新機能の開発などに取り組む。シン・オートコールとは別の新システムが出来上がれば、市は実証実験を行うフィールドを提供する。
市は、防災行政無線やSNSを活用して防災関連情報を発信している。しかし、無線の音声が聞き取りづらいエリアがあるほか、SNSになじみがない高齢者がいる課題などを踏まえ、「情報の到達度をより高める新たな方法を」と、NTT東日本との共同でシン・オートコールを開発。令和5年11月に運用を開始した。
事前登録した固定・携帯電話に自動音声で避難情報を伝え、市民が現在地やけがの有無などの質問に回答すると、AIが音声情報を文字化し、市災害対策本部のモニターに一覧化される仕組み。行政による一方通行の情報発信ではなく、市民との「双方向」の情報のやり取りを可能とする。
同システムは実用性、革新性などが認められ、本年度の地域安全学会技術賞を受賞。全国の他自治体で徐々に導入が進んでおり、能登半島地震で被災した石川県珠洲市でも本格運用が計画されているという。
こうした浸透を踏まえ、陸前高田市はシン・オートコールをブラッシュアップさせ、市内の地域防災力の強化とともに、全国にデジタル技術の活用法を発信していこうと、これまでも担当者レベルで連携してきた東京大、NTTグループと組織間のパートナー関係を築くこととした。
市防災局の中村吉雄局長は「協定は3者が対等な立場で連携し、新たなものを創り上げる『共創型』であることが特徴。防災・減災のまちを標ぼうする市として、大学や企業の力を借りながら防災のDXを進め、地域防災力向上につなげたい。そうした取り組み、生み出したシステムが他自治体の参考にもなれば、震災支援の恩返しにもなる」と話す。
シン・オートコールのシステムイメージは別掲。







