7年度水揚げ量8.1㌧ 広田湾産イシカゲ貝 H26年度以降最少の実績に
令和7年10月29日付 1面
							 陸前高田市の広田湾漁協(砂田光保組合長)は、特産の広田湾産イシカゲ貝の本年度水揚げ実績をまとめた。数量は大幅に落ち込んだ昨年度の約半分となる約8・1㌧で、東日本大震災後本格的に出荷を再開した平成26年度以降で最少となった。貝のへい死が相次いだことなどが要因。同市が全国に誇る人気の水産品だが、この数年は深刻な不漁に見舞われている。
 本年度は7月中旬から出荷し、8月中旬まで約1カ月間水揚げした。生産者が採苗している天然稚貝の数が例年より少なく、さらに成育中のへい死も多く発生した。イシカゲ貝は高水温の影響を受けやすいとされ、多発するへい死には海水温の上昇が背景にあるとみられている。
 結果、昨年度の約16・1㌧から半減。減産は3年連続で、平成26年度以降初の10㌧以下となった。
 濃厚な甘みと弾力ある歯ごたえが特長のイシカゲ貝。すしネタや刺身などに使われ、血圧降下やコレステロールの抑制などに効果があるとされるタウリンが豊富に含まれている。
 陸前高田市では平成8年に全国で初めて養殖の事業化を実現。震災の津波で養殖施設が壊滅し、生産者による地道な稚貝の採苗、施設の復旧を経て、26年に本格的な出荷再開にこぎ着けた。
 安定生産が大きな課題だが、令和4年度に過去最多の約84㌧を水揚げし、数量を順調に伸ばしてきた。同年には、唯一無二の希少さと生産者の品質向上への努力が認められ、地域ブランドを知的財産として保護する国の「地理的表示(GI)保護制度」に産品登録。豊洲市場を中心に、関西や中部、東北の地方卸売市場などにも出荷し、認知度の広まりとともに、市が目標に掲げる年間収量100㌧突破への期待が高まっていた。
 しかし、近年は成育途中のへい死が生産現場を悩ませている。来年度はさらに減産となる見通しで、苦境が続いている。
 広田湾産イシカゲ貝生産組合の熊谷信弘組合長(69)は「非常に厳しい状況で、来年度はさらに壊滅的になる。明るい兆しは再来年度の出荷分をある程度まとまった量で育てられていることだが、今後へい死する可能性もある。なんとか夏を乗り越えられるよう祈りながら育てていくしかない」と語る。
                        
                    





