気仙は10㌔平均5万7822円 県漁連で11月分アワビ事前入札会 禁輸措置の影響収束見通せず

▲ 中国の禁輸措置の影響で価格動向や漁況が注目されるアワビ(昨年11月、吉浜漁協管内)

 県漁業協同組合連合会は28、29の両日、本年度第1期(11月分)のアワビ事前入札会を開いた。気仙地区からは4漁協が上場し、水揚げ予定数量は前年同期を下回る15・2㌧、10㌔当たりの平均価格は5万7822円で、前年の5万8000円台をわずかに下回った。県産アワビは、東京電力福島第一原発のALPS処理水海洋放出による中国の禁輸措置で、入札価格が大幅に下落。中国は今年6月に条件付きでの輸入再開を発表したが、価格や取引に及ぼす影響の収束は見通せない。第1期の漁は11月1日(土)に解禁され、気仙では4漁協で開口を予定している。(菅野弘大)

 

 気仙地区分の入札は29日に実施。予定数量合計は15・2㌧で、前年比2・6㌧減。10㌔当たりの平均価格は5万7822円で、前年を838円下回った。平均価格の最高値は、昨年に続き吉浜漁協(専属)の6万3800円で、昨年より1400円下落した。
 近年の気仙地区の第1期入札結果の平均は、平成28年が6万円台、29年が7万円台となり、30年は不漁傾向を反映して10万円台まで上昇。令和元年は11万円とさらに上がった。
 2年は新型コロナウイルスの影響で、7万円台まで低下。3年は上昇に転じ、4年は令和元年に近い高値となった。
 県産アワビは、その多くが中国で高級食材として扱われる干鮑に加工され、香港へと輸出されるが、福島第一原発の処理水海洋放出を受け、中国政府は令和5年8月以降、日本産水産物の輸入を停止。長引く禁輸措置によって荷動きが止まり、5年度は7万円台後半、6年度は5万円台後半と、入札価格が大きく低迷した。
 県漁連では、処理水の海洋放出開始以降、東京電力と賠償を巡る協議を続け、昨秋に合意。5、6年度の価格下落分の賠償金は支払いを受け、7年度分の支払いについても協議を進めている。
 昨季の漁況は、しけによる高波や潮の流れの影響で、県全域で出漁回数が減少。昨年11月は上場した浜の約半分が、不安定な海況で開口できない事態となった。気仙地区でも、開口日の朝に海況が変わり、出漁を見送るケースも見られ、禁輸措置長期化による価格低迷と、出漁が限られ数量も伸び悩む〝二重苦〟の状況が漁業者を襲った。
 気仙沿岸の漁獲実績(1号品)は、第1期(昨年11月)と第2期(同12月)を合わせ、数量は前年度比43・5%減の8・42㌧。金額は同54・8%減の4850万円で、いずれも大幅な減少となった。県全体の水揚げ量も、58・52㌧(前年度比42%減)で過去最低に終わった。
 中国政府は今年6月、日本産水産物の輸入を一部再開すると発表したが、禁輸措置以前のような円滑な取引には至っておらず、関係者は状況を注視する。県漁連では「依然として落札価格は安値となっており、(禁輸措置の)影響が色濃く残る。輸出にも厳しい状況で、どこまで続くか見通せない」とする。
 気仙の5漁協のうち、綾里は昨年に続いて11月分の上場を見送り、12月の上場を予定。「資源保護と高水温の影響による海況の変化を考慮した」という。
 12月1日(月)からとなる第2期分の入札は11月28日(金)に行う。気仙地区の漁協ごとの第1期分入札価格(10㌔当たり)、予定水揚げ数量、口開け回数は次の通り。
 【広田湾漁協】
 ▽気仙=5万3910円、0・15㌧、1回
 ▽小友只出=5万5900円、0・3㌧、2回
 ▽広田1区=5万6200円、1・5㌧、2回
 ▽広田2、3区=5万5000円、1・5㌧、2回
 【大船渡市漁協】
 ▽末崎=5万5600円、2・5㌧、2回
 ▽赤崎=6万1590円、2㌧、2回
 【越喜来漁協】
 ▽専属=5万4000円、1・2㌧、1回
 ▽入会=5万7000円、1㌧、1回
 【吉浜漁協】
 ▽専属=6万3800円、2・7㌧、2回
 ▽入会=5万7000円、0・8㌧、1回