防水処理に資金協力を 市の千石船「気仙丸」利活用推進協議会 保全策へクラウドファンディング開始

▲ 支援への協力を呼びかける千石船「気仙丸」利活用推進協議会の関係者㊤

 大船渡市の千石船「気仙丸」利活用推進協議会(会長・米谷春夫商工会議所会頭)は、大船渡町のおおふなぽーと付近に陸上展示している気仙丸の保全プロジェクトを立ち上げた。30日には、クラウドファンディングサービスの「READYFOR(レディーフォー)」で資金協力の呼びかけをスタート。船室屋根部分からの浸水が深刻な問題となる中、第1目標額を300万円とし、寄せられた支援は防水処理に生かす。(佐藤 壮)

 

塗装の剥がれが目立つ甲板部分

 平成3年に完成し、翌年の「三陸・海の博覧会」協賛出品後、大船渡湾内で係留されていた「気仙丸」は、

液体ガラス塗装を施し、令和3年10月から陸上展示が始まった。長年、雨風にさらされて船体の老朽化が進み、特に船室屋根部分からの浸水が深刻な問題になっている。船体のさらなる劣化を招きかねず、早急な対応が求められている。
 建造を担った大工集団「気仙船匠会」は高齢化もあって今年5月に解散。存命のメンバーも少なくなり、木造帆船技術の継承も危機にひんしている。同協議会では、地域の誇りであり続けてきた「気仙丸」や、建造に関する歴史文化そのものが失われる危機感を抱く中、保全プロジェクトを始動させた。
 30日には、展示されている「気仙丸」の前で記者会見を行った。米谷会頭は「千石船は、明治初期までは数多く存在していた。気仙船匠会の手によって、平成の時代には1隻も残っていなかった『海上で自走できる千石船』として復元され、その後に各地で建造の動きが広がった嚆矢となった。『気仙丸』は、次世代に手渡すべき公共財。保全を通して、文化と歴史の継承を進める」と力を込めた。
 同協議会のメンバーで、「気仙丸」の建造に携わり、長年気仙船匠会の副会長を務めてきた菅野孝男さん(82)=陸前高田市気仙町=は「『気仙丸』が長く地域を見守ってくれることを強く願っている」と語った。
 クラウドファンディングの目標額は300万円。このうち200万円は防水防雨シートの施工や固定具の設置に充てる。残る100万円は、腐食部の局所的な修繕に加え、付着した藻類や菌類の除去に活用する。
 期間は12月24日(水)まで。達成した際には、来年2月~3月にかけて、船室の屋根部分となる甲板で重点的に防水対策を行う。塗装の剥がれが目立つようになった甲板そのものの腐食を防ぐほか、雨水の浸入を防ぐことで、船室の保護も見据える。 目標額達成に向け、11月3日(月・祝)には神奈川県鎌倉市で開催されるイベント「大船夜市」でチラシを配布するほか、「気仙丸」のインスタグラムアカウントを開設。ポスターやチラシの展示も進める。


 さらに、11月中には夜間見学会「気仙丸ナイトツアー」を計画。12月5日(金)には、市観光物産協会のイルミネーション事業「おおふなとの灯」に合わせ、船上を開放する。
 支援に合わせた「リターン」にも工夫を凝らす。1万円の支援ではオリジナルの木彫りキーホルダーを贈るほか、5万円は撮影場所として半日貸与する。さらに100万円では、千石船が運んだとされる高級食材・干鮑を味わう夕食などが盛り込まれた1泊2日ペアの「鮑の聖地巡礼・満喫ツアー」も用意している。
 クラウドファンディングは専用サイト(別掲QRコード)で対応。問い合わせは協議会事務局の大船渡商工会議所(℡26・2141)へ。