守り続ける 地元の総鎮守 焼失逃れた社殿で例祭挙行 三陸町綾里 田浜地区・天照御祖神社(別写真あり)

▲ 総代らによる『大漁唄い込み』奉納などが行われた天照御祖神社の例祭

 大船渡市三陸町綾里の田浜地区に鎮座する天照御祖神社(熊谷典昭宮司)で1日、「秋の例祭」が挙行された。2月に相次いで発生した林野火災で境内が被害に遭いながらも、焼失をまぬがれた社殿で祭儀が執り行われたほか、住民らも芸能を奉納。林野火災で特に長期の避難生活を強いられた同地区の住民らが、過去の災害から難を逃れ続けてきた〝地元の総鎮守〟を守る思いを一層強めた。 (齊藤 拓)

 

 同神社は文安~宝徳年間(1444~1452)の鎮座と伝えられる。綾里全体を守る神をまつった「総鎮守」にあたるとともに、明治期の気仙を代表する大工棟梁の花輪喜久蔵が明治28(1895)年に建造した神輿が残る。東日本大震災では石段の上部まで浸水しながらも、社殿や神輿には被害が及ばなかった。
 今年2月19日に同地区から出火した林野火災では、避難指示の発令に伴い住民らが綾姫ホールなどへ避難したものの、同神社を含め人や民家への被害はなかった。
 しかし、同月25日に避難指示が解除されたのもつかの間、26日には大規模林野火災が発生。19日に発生した林野火災の鎮圧から間を置かず、同地区の住民はさらに長い避難生活を強いられる事態となった。
 懸命の消火活動が続く中、同神社の周囲にも炎が押し寄せ、ご神木を含む境内一帯の林などが黒く焼け焦げた。一方で、緊急消防援助隊の尽力もあって社殿には火が回らず、電気系統と水道が被害を受ける程度にとどまった。3月10日に改めて避難指示が解除されてからは、焼けた木の伐採などと並行しながらも、同神社は総鎮守の役割を果たし続けてきた。
 同神社の秋の例祭は、地元の田浜契約会(川下信彦会長)が願主となって毎年挙行している。この日は、前日からの低気圧の影響で強い風が吹いていたものの、懸念されていた雨は上がり、総代や住民約40人が参列した。
 祭儀では熊谷宮司が祝詞を奏上し、参列者が玉ぐしを奉てんした。続いて、総代や漁業者らが『大漁唄い込み』を奉納。生活となりわいの復旧途上にあり、練習時間が限られていた中でも、参列者は総代の歌に合わせてかけ声を上げ、長く受け継がれてきた芸能もつないだ。
 川下会長は「社殿が残ったのも、消防関係者らのおかげ。人口減などで大きな催しはできないが、この神社で例祭を行えてよかった」と話した。
 また、この日は花巻市大迫町に伝わる「大償神楽」が、同市の大償神楽保存会(吉田伸一朗会長)によって奉納された。演目の中から、神社の名前に合わせた『天照五穀』や、自然の神々を鎮めるための『山の神』などの舞を披露し、林野火災で被災した地域と住民の安寧を願った。
 熊谷宮司は「まだ境内には焼けた木が残っており、様子を見つつ対処していく。来年には五年祭を催す予定で、そこに向けてこれから何ができるか、地域内外の住民と話し合い協力していきたい」と話した。