市内全域に一斉周知へ 相次ぐクマ情報受け臨時対応 きょうから防災行政無線運用見直し

 大船渡市は相次ぐクマ出没通報を受け、これまで町や地区別に限定していた防災行政無線による周知を、4日から臨時的に市内全域を対象とする。山間部に限らず市内全域で出没が確認されていることなどから、情報発信を強化し、警戒を呼びかける。市公式LINE(ライン)アカウントでも出没情報を確認でき、活用を呼びかける。    (佐藤 壮)


 10月における市内のクマ出没状況は別掲の通り。同月は30件に上り、月別では7月の28件、6月の24件を超え、本年度最多となった。今秋に入り、人的被害は確認されていないが、教育現場では、臨時休園といった対応に迫られ、イベントの中止も。子どもたちのスポ少活動でも屋外での練習を取りやめるといった動きがあり、影響は広範囲に及んでいる。
 10月の出没場所を地区別でみると、日頃市町が8件で最も多いが、商業施設や公共施設が多い盛町、大船渡町でも複数の目撃がある。通勤、通学で両町を訪れる住民もいるほか、市外からのビジネス関係者や観光客の来訪も多く、情報共有の充実が求められている。
 これまでは、出没した町内での放送などにとどめていた。全域を対象とする防災行政無線による周知は、11月末までの臨時的な対応とする方針。クマの冬眠時期に入る12月には通常に戻すことにしている。
 市農林課の佐藤雅基課長は「人里に多く現れ、心配や不安の声が上がっている。全域に情報を流し、注意を促したい」と話す。
 一方、市は本年度、デジタル技術を生かした「行かない窓口」の一環で、市公式LINE(ライン)アカウントを更新。受信設定のうち「クマの出没情報」では、「市内すべて」だけでなく、各地区単位でも受信するかどうかを選択できる。これまでの登録者では、在住地だけでなく、職場や家族が通う学校がある地区などを設定するケースが多いという。
 今後も出没が予想される中、農作業中には▽ラジオなど音の出るものを携帯し、自分の存在をアピールする▽行動が活発になる早朝、夕方の作業時には特に周囲を確認する▽森林や斜面林などに隣接する農地は出没ルートとなりやすいため、特に注意し、周囲にある灌木の刈り払いなどを行う▽単独作業は避け、可能な限り複数で作業する──を呼びかける。
 また、クマをおびき寄せないための日常的な取り組みの重要性も訴える。生ごみや野菜くずの処理に加え、カキなどの果樹を収穫せず放任状態にある木の伐採も求めている。
 農作物収納庫への侵入も考えられる中、施錠徹底も強調。ガソリンなどの揮発性物質もクマを誘因することがあるため、注意を促している。
 クマ出没の通報があった場合は、現場では花火などを使った追い払いを実施している。さらに、農業被害や人身被害の発生時、頻繁に同一地域に出没するなど被害の可能性が高いと判断される場合は、箱わなを設置しており、本年度はこれまでに11頭を捕獲した。
 このうち、10月は4頭を捕獲。カキの実を求めて来る動きに対して箱わなを設けて3頭がかかった。残る1頭は、シカのくくりわなで動けなくなっていたという。
 市はマニュアル策定に加え、ハンターで構成する鳥獣被害対策実施隊との連携、防具確保等を進めるなどして、緊急銃猟を実施できる体制を整えている。
 クマを目撃した際は、市農林課(℡27・3111)か大船渡警察署(℡26・0110)に連絡を。