8割超で現地作業完了 大規模林野火災に伴う公費解体 当初計画通り年内に終わる見込み

▲ 公費解体が進み、更地が広がる綾里の港地域

 大船渡市大規模林野火災に伴い、市が赤崎町と三陸町綾里で実施している被災建物の「公費解体」は、所有者から申請があった222棟のうち、8割超で現地作業が完了したことが分かった。3分の2に当たる142棟では、先月末時点で所有者との立ち会い確認も終了。被災地域では更地が目立つようになった。撤去した災害廃棄物の処理では、赤崎町の永浜・山口工業用地内の仮置き場を活用している。当初計画通り、現地作業は年内完了を見込む。(佐藤 壮)


 所有者の希望に応じて行う公費解体は、生活環境保全や二次災害の防止などが目的。全壊に関しては国の災害等廃棄物処理事業補助金を活用し、半壊家屋などに関しては市の独自支援策として行う。
 申請棟数は10月末現在で222棟。全壊174棟と全壊以外4棟に加え、「り災届出証明書」で全壊等と判断される外便所や物置といった課税対象外の建物は44棟となっている。 
 申請は4月12日にスタート。同28日から現地立ち合いに入り、市と業者、建物所有者らが境界や撤去する部材などを確認し、5月30日に始まった。現場が点在している中、申請受け付け順ではなく、周辺環境への影響や作業条件等を考慮したほか、漁業用の倉庫設置など早期の土地利用を望む住民の意向も尊重した。
 7月には、永浜・山口工業用地内の大船渡湾側に位置する県有地の3600平方㍍に仮置き場を確保。可能な限りリサイクルするため、がれきをはじめとした混合廃棄物のほか、木くずや金属くず、処理困難物などに分け、種別ごとに県内6カ所の処分先に搬送している。基礎部分などの撤去によるコンクリートがらやアスベストを含有する災害廃棄物は、被災現場から直接処分先に運んでいる。
 9月下旬以降、公費解体に係る作業班は7班体制としている。222棟のうち、9割超の214棟で着手済み。残る8棟について、市は「地理的に作業の流れから遠くにあったり、孤立しているといった要因で、順番待ちのような状態」としている。

赤崎町の永浜・山口工業用地内に設けた仮置場の活用も進む

 地域別では、赤崎町の合足地域ではすべての建物で所有者の最終立ち合いまで進んだ。1棟のみで立ち合いが終わっていないなど、綾里を含め現地作業が全て終わった地域も出てきている。現地作業が完了した建物の割合は、先月末で8割を超えた。
 公費解体の全体終了目標時期は12月末としている。事業を管轄する市民環境課の新沼優課長は「現場の作業はもちろん、完了の立ち会いがスムーズに進められるよう対応していきたい」と話す。
 建物が集中している綾里の港地域でも、がれきが撤去されて更地が広がり、3月の避難指示解除直後の風景とは大きく変わった。公費解体が計画通りに進む中、被災者らの関心は土地の再利用や住宅再建に移りつつある。
 市は先月末を回答期限とし、被災世帯を対象に住まいに関する意向調査を行った。今月中旬をめどに、結果の取りまとめを行う。同下旬には、住宅再建個別相談会の開催を予定する。