来年度行政経営方針と予算編成方針──地場企業振興や子育て重視 大規模林野火災の復旧・復興施策踏まえ
令和7年11月8日付 1面
大船渡市は、令和8年度の行政経営方針と予算編成方針をまとめた。大規模林野火災からの復旧・復興事業を含む地場企業振興や子ども・子育て支援の充実などを重点施策に掲げる。予算編成では、継続事業について一般財源は「7年度当初予算額以下」を原則とし、燃油等物価高騰対策も「ゼロベース」での検討を指示。ふるさと納税基金は6000万円程度の活用を見込む。(佐藤 壮)
市は予算編成に向け、令和4年度から行政経営方針を策定。重点分野の明確化に加え、予算規模の縮小を余儀なくされる中、経営資源を重点施策に振り向ける狙いもある。
一方、予算編成方針は毎年度策定し、事務調整を進めている。市の基本的な行政運営の考え方を広く示していこうと、広聴・広報戦略の観点も含め、昨年度から公表している。
8年度行政経営方針によると、総合計画後期基本計画の初年度にあたる年度として、将来都市像の実現と林野火災からの復旧・復興に向け、前期計画の成果や課題を踏まえた取り組みの重要性を指摘。優先的に取り組むべき施策として①地域経済を支える地場企業の振興②(仮称)子ども・子育て支援の充実③質の高い行財政運営の推進──を掲げる。
地場企業の振興には農林水産業を含み、大規模林野火災の復旧・復興に関する事業も入る。行財政運営の推進ではDX(デジタルトランスフォーメーション)事業を進める。
林野火災の延焼範囲は平成以降では国内最大規模となる3370㌶に及び、森林被害にとどまらず、農林水産業施設や資機材の焼失など、被害や影響は多方面にわたる。8年度は、森林の復旧計画に基づき、伐採・植栽・管理等の整備を着実に進めるほか、水源かん養や環境保全、土砂災害防止など森林の持つ多面的機能の回復に向け、民間企業や団体の社会貢献活動による植林などを受け入れるほか、脱炭素の取り組みも検討する。
子ども・子育て支援では本年度、渕上清市長が市長選時の公約に掲げた保育料無償化が始まった。今後に向けて、市長は「安心して子どもを産み育てる環境づくりを大切にしているが、学童保育充実や中高生の居場所づくり、新たな形の部活動の対応など、小中高生の分野にも目を向けていきたい」と話す。
予算編成方針では、歳入は生産年齢人口減少や物価高の影響などにより、個人・法人市民税の減少が予想される。歳出では、社会保障分野の扶助費に加え、一部事務組合や公営企業への補助費や、公共施設の効率的な維持管理に向けた指定管理料をはじめ物件費の増加傾向に言及。健全財政の必要性を掲げる一方で、将来都市像の実現に向けた施策や、大規模林野火災の復旧・復興事業の推進も強調している。
予算要求の基本的な考え方では、行政経営方針でも掲げる3分野の重点施策としている。各課における継続事業の予算要求一般財源額は「現年度当初予算額以下を原則」とした。
6年度の予算編成は2・5%減、7年度は1%減と数値が盛り込まれたが、今回は見送られた。理由について、市財政課では「昨今の人件費、物価高騰の影響があり、それらの費用増を考慮した」と説明する。
6年度に新設した市ふるさと納税基金の特別枠は、8年度は6000万円の活用を見込む。燃油等物価高騰対策で実施した事業は、単に継続せずに「ゼロベース」で必要性を検討するよう指示している。
行政経営方針で示した財政計画では、一般会計における8年度の歳入計画額は226億円としている。現年度当初の210億円を上回るが、今年6月議会で可決された補正予算に大規模林野火災の見舞金5億円余りを加えた237億円よりは少ない。
9年度は大規模林野火災の林野再生をはじめとした復旧・復興事業のピークを予想し、247億円を見込む。10年度は222億円で、11年度は204億円、12年度は200億円。地方税収入の減収が見込まれる中、既存の事務事業のあり方を見直しながら、事業費の圧縮に努める。
今月中旬に各部課の予算要求を締め切り、来年1月の市長査定を経て、2月中旬以降に予算案を公表し、市議会に提案する。





