絆のコラボ菓子「舫う」誕生 木村屋、輪島の中浦屋 東日本大震災、能登地震で被災の老舗店

▲ 15日に発売する焼き菓子「舫う」と、中浦屋への支援の第一歩となった復興支援CDを手にする木村洋平さん

 東日本大震災で被災した陸前高田市の「おかし工房木村屋」(木村昌之代表)と、能登半島地震で被害を受けた石川県輪島市の㈱柚餅子総本家中浦屋(中浦政克代表取締役社長)は、焼き菓子「舫う」を共同開発した。ともに地域から親しまれる老舗菓子店で、木村屋は中浦屋からの支援で早期の事業再開にこぎ着けた。中浦屋は工場を失ったため、「舫う」の製造は木村屋が引き受ける。販売は中浦屋で10月に始まり、木村屋では今月15日(土)から店頭に並ぶ。震災発生から11日で14年8カ月。災禍に襲われた二つの店の絆を象徴する小さな菓子が、遠く離れた陸前高田と輪島を強く結ぶ。(高橋 信)

 

 「舫う」は2艘の船をつなぎ合わせ、雨風をしのぎながら出港を待つという意味を指す。苦難に遭った木村屋と中浦屋の友情と信頼という思いを込めて商品名にした。
 震災で2店舗と工場が全壊する被害を受けた木村屋。事業再開の見通しは立たず、途方に暮れていた中、背中を押してくれたのが中浦屋だった。支援のため陸前高田市を訪れていた代表取締役社長の中浦さん(62)が、同市を通じてつながった木村屋から要望を聞き、発災から約4カ月後の平成23年7月、調理場付きのコンテナを届けた。この支援で木村屋は、早期の製造再開にこぎ着けた。
 木村屋は24年に仮設店舗で再出発し、27年に本設店舗を再建。同市の復興のシンボル「奇跡の一本松」をイメージしたバウムクーヘン「夢の樹バウム」といった看板商品を生み出し、令和5年には本店隣にベーグルとジェラートをメイン商品にした店舗「夢の樹マルシェ」を開業した。
 夢の樹マルシェ店長で、木村屋4代目の木村洋平さん(39)は「中浦さんからの支援が紛れもない再出発の原点」と振り返る。
 令和6年1月1日。今度は中浦屋が地震や火事に襲われ、店舗や工場を失った。
 木村さんは「今こそ恩返しを」と早期に動き出した。家業の傍ら、ギタリストとしても活動しており、有名ミュージシャンとコラボレーションして作成したギターインストゥルメンタルCDを、同年4月に復興支援CDとして販売。売上金のうち手数料を除いた全額を中浦屋に寄付している。
 木村さん個人の活動を起点に、木村屋としての支援を模索。中浦さんと連絡を取り合う中で、コラボ菓子の開発が持ち上がった。
 「舫う」はミルク餡をシナモン生地で包み込んだ焼き菓子。中浦屋の銘菓「高洲山」をベースに、木村屋の焼き菓子「けせん坂」の生地の配合を取り入れた。
 製造は木村屋が担い、中浦屋には週1回ペースで発送。石川県金沢市で10月に開催され、1万5000人超が参加した金沢マラソンのランナーにも振る舞われ、人気を博した。
 9月に仮設店舗がオープンし、再出発を果たした中浦屋。中浦さんは「木村屋さんとは何でも相談できる親戚のような間柄。舫うが出来上がり、非常に感慨深い」と語る。
 木村さんは「輪島と陸前高田の距離は離れているが、心はすぐそばにある。一時的な支援ではなく、つながり合うことができ、うれしい」と喜ぶ。
 舫うの販売価格は1個237円(税込み)。