前期基本計画総括で議論 市議会全員協議会 後期見据え林野火災、クマ対策も

 大船渡市は11日の市議会全員協議会で、令和3~7年度を期間とする市総合計画前期基本計画の進捗状況を示した。6年度までの成果実績は、進捗度評価が24施策中22施策と9割以上に及ぶ点などを挙げ、「おおむね順調に推移」と総括。一方、6年度に実施した市民意識調査では、医療や子育て、公共交通、地域活動などの評価が依然として低く、さらに力を入れて取り組む必要性も浮き彫りになっている。
 市は8年度から5年間を期間とする後期基本計画の策定作業を進めている。前期基本計画のうち、6年度までの施策の進捗を取りまとめた。
 基本計画では▽豊かな市民生活を実現する産業の振興▽安心が確保されたまちづくりの推進▽豊かな心を育む人づくりの推進──などの大綱別に24施策を掲げる。「十分達成できている」は5施策、「ほぼ達成できている」は17施策、「あまり達成できていない」は2項目となった。
 大綱に基づく成果指標では、49件中42件で達成率70%以上に達し、基本事業では214件中161件と大半を占める。市は「おおむね順調に推移している」ととらえる。
 一方、市は今年1~2月に無作為抽出した18歳以上の男女2000人を対象に市民意識調査を実施。分野ごとに「そう思う」「どちらかといえばそう思う」「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」「わからない」の5段階で回答を求めた。
 主な設問と回答結果は別掲の通り。前期計画策定時との比較では、道路環境や自然環境、健康づくり、買い物環境、就労環境の各分野では、比較的高い水準で推移。医療や子育て、公共交通、地域活動などの分野は、肯定的な回答の低さや、令和2年度の前期計画策定時からの下落が目立つ。
 全員協議会での質疑では、当局側の「おおむね順調」との認識と市民意識評価で満足度が低い回答との差異を挙げ、議員から「ギャップをどのように分析しているのか」との指摘も。阿部貴俊企画調整課長は「施策評価は、実現可能な目標値に対してどこまで取り組めているかを示すもの。一方で、市民意識調査の設問内容を十分に満たせるものではないことも認識している。今後も継続的に取り組み、市民とのギャップを埋めるようにしたい」と理解を求めた。
 議員からは、市民意識調査回答者は65歳以上や無職の割合が多く、偏りを指摘する声も。阿部課長は「今後の大きな課題。紙のみならず、若者からより回答が得られるようにしたい。この調査に限らず、懇談会やグループインタビューなど、市民に向き合う機会を大事にしたい」と述べたほか、調査方法そのもの見直しも示唆した。
 低評価が多い公共交通に関する今後の方向性も議論となり、大和田達也港湾振興課長は「周辺自治体の調査もしながら、いろいろなサービスを展開したい。市内にある交通資源、患者輸送車、スクールバス、事業者の車両を有効に活用し、負担をできるだけ抑えるよう努める」と答えた。
 来年度からの後期計画に関しては、複数議員が大規模林野火災との関連を取り上げた。被災木の活用では、延焼地域外でも未利用林が多い状況から、バイオマス材の地元利用促進をはじめ成長産業としてとらえ、地場企業振興にもつなげるよう求める意見も出た。
 また、クマ対策でも「鳥獣被害というレベルを超えている」とし、後期計画で重点施策として取り入れるよう求める発言も。市側は、佐藤雅基農林課長は「クマに限らず、サル、シカ、イノシシ対策も全般的に取り組む必要がある。クマ対策で重要な緩衝帯の確保は、森林再生復旧事業を進める中で、この観点も考えていきたい」と語った。
 後期計画策定に向け、来月下旬に4回目の市総合計画審議会を予定。来年1月に市議会全員協議会、2月にパブリックコメント、3月には議会で議案審議を計画している。