クマ出没 広がる不安 町は対策強化急ぐ 人里での目撃も多数(動画あり)

▲ 世田米商店街に出没したクマ(読者提供)

 各地でクマの出没が相次ぐ中、住田町では対策強化を図っている。住民への注意喚起や出没情報の発信に加え、クマの誘因につながる放任果樹などの伐採にかかる補助を実施し、箱わなの購入、緊急銃猟の実働体制整備なども進めている。人の生活圏への出没も増加していることで住民の間には不安が広がっており、町では人的被害防止の対策強化を急いでいる。(清水辰彦)

 

 今月7日朝、同町世田米の世田米保育園にほど近い商店街の一角を、成獣とみられるクマ1頭が走り抜けた。
 「保育園、小学校、中学校に通う地域の子どもたちも通る道なので不安」──。保育園近くに住む40代の女性は、子どもを中学校に送り届けるために車に乗り込んだところで、クマが目の前を通り過ぎていった。
 女性の車両に登載されていたドライブレコーダーの映像を見ると、クマは住田中学校裏手の山林の方向から世田米商店街に現れ、その後、素早く走り去った。出没前後には車両が行き交い、通行人の姿も映っていた。
 町には今年4月から10月末までに56件の目撃情報が寄せられている。6月には上有住地内で60代男性が襲われけがを追う人身被害、9月には世田米地内で車両との衝突事故、10月は上有住地内で自宅敷地内から飼い犬が連れ去られたとみられる事案も発生。果樹や飼料の被害も相次いでいる。
 目撃しても通報には至っていないケースも考えられることから、潜在的な出没件数はさらに多い可能性もある。11月に入ってからも目撃情報は多く寄せられており、住民の間には「朝や晩には、少し外に出るだけでもかなり注意している」と、不安が広がっている。
 町では、防災行政無線で午前、午後の1日2回、注意を呼びかけ、町ホームページ、公式SNS、住田テレビでも注意喚起や目撃情報の発信を行っている。
 現在、捕獲用の箱わなは町が2基、ハンターが5基を所有しているが、町では追加で5基を発注。従来は被害が発生した際に設置していたが、納入後は市街地に出没した場合、すぐに設置して被害の未然防止を図る。
 町鳥獣被害防止対策実施隊の出動手当は、現状の1回1500円から引き上げる方向で動いている。
 9月に改正鳥獣保護管理法が施行され、市町村の判断で特例的に市街地での猟銃の使用が可能となったことを受け、体制整備も進めている。同隊による対応が想定されており、隊との会議を設けて実働体制を調整している。
 町林政課では、「人身被害が発生しないよう、注意喚起や情報発信にも努めていく。住民の皆さんには、クマを誘因する生ゴミや果樹を適切に管理していただくなど、自分の身を守る行動にご協力いただければ」としている。
 また、鳥獣害緊急対策事業費補助金として、シカ防護網や電気牧柵などの設置・修繕に加えて本年度から放任果樹等の除去に関する経費も補助。金額は当該経費の2分の1以内で、40万円が上限となる。
 注意点として、放任果樹に関しては伐採後の申請では補助の対象とならないため、町農政商工課では「補助を希望する方は、事前に一度問い合わせてもらえれば」と呼びかけている。
 町議会でも、クマの出没増加を受けて当局と意見交換を行っており、近く▽個体数管理▽シカの適切な埋設処理の呼びかけ▽安全確保対策──などを町に申し入れる予定。