林野火災の実態 多角的に 科研費支援の研究グループが1月に報告会開催へ 延焼要因や山林復興など、市民と質疑応答も
令和7年11月14日付 1面
文部科学省の科学研究費助成事業(特別研究促進費)による支援を受けた「突発科研費大船渡市山林火災研究グループ」(研究代表・桑名一徳東京理科大学大学院創域理工学研究科教授)による報告会が、来年1月24日(土)に三陸町越喜来の三陸公民館で開催されることになった。各種研究成果の発表に加え、市民との質疑応答も予定。延焼拡大や消火、林地再生、市街地の復興など、平成以降で最大の延焼面積となった災害に関する知見を多角的に深める機会になりそうだ。(佐藤 壮)
報告会は、同グループと市が主催。火災発生から約10カ月間の調査結果から、林野火災の実態などを市民や関係機関等に向けて広く示す場として開催する。
当日は概要説明のあと、報告として▽林野火災時のリスク評価▽市街地側の調査研究▽林野火災が森林生態系の物質循環に与える影響▽林野火災後の山林復興▽林野火災および市街地複合火災からの復興──を予定。最後に市民との質疑応答時間も設ける。
現段階での研究によると、リスク評価に関しては、今回の大規模林野火災では、標高261㍍の八ヶ森における焼損が顕著だったことから、出火直後の延焼速度に関する詳細な調査を実施し、梅雨開始までに未焼損域可燃物の水分量調査を実施する。さらに、リアス海岸特有の複雑な地形が延焼加速を引き起こすメカニズムの解明、消防活動やヘリコプター散水による効果、今後起こり得る土砂災害などとの関連にも迫る。
市街地側の調査研究では、延焼動態の推定に加え、発生した火の粉の飛散範囲や飛び火による大規模延焼の実態解明を見据える。さらに、炭化残留物をはじめ林野火災が森林生態系の物質循環に与える影響や、焼損木利用の方向性、市街地における応急対応・復旧過程の課題に関する考察など多岐にわたる。
2月26日に発生した大規模林野火災の延焼面積は、3370㌶。住家被害は90棟で、このうち全焼54棟。非住家は136棟で、全焼は121棟。綾里の小路、港両地域、赤崎町の外口地域などで建物の延焼が発生した。消防庁長官の火災原因報告書によると、港地域では9カ所の出火点が確認され、いずれも飛び火によるものと考えられる。
延焼要因には林野内の可燃物が乾燥していた状況や、火災初期の強風により、樹冠火を伴う激しい燃焼と飛び火が発生し、さらにリアス海岸の複雑な地形と局地的な風の影響を受けたことなどを挙げている。市内面積の1割を超える地域に火の手が及んだ一方で、発生当日から避難指示が出たため、住民にとっても地元地域が被災した要因が分からない面も多い。
市は研究に協力していることや、大規模な火災となった要因を示す機会として、主催に加わった。市防災管理室の伊藤晴喜次長は「さまざまな分野の調査研究成果が示される場となる。市民の皆さんも今回の火災に関する疑問や、今後の影響への不安があるのではないか。身近に感じている問題の要因が明らかになる機会にもなれば」と話す。
開催時間は午後1時30分~4時を予定。会場での聴講に加え、オンライン配信も予定。市は今後、改めて日程をはじめ、来場に関する情報を周知することにしている。






