「命を守れる人」地元から キャッセンエリアの防災学習プログラム 市内小中高生団体の体験無償化(別写真あり)
令和7年11月15日付 7面
大船渡市のキャッセンエリアプラットフォーム(代表・田村滿㈱キャッセン大船渡代表取締役)は、防災観光アドベンチャー「あの日」を通じた防災学習プログラムについて、市内の小学校高学年~高校生世代に無料で体験機会を提供し、防災教育の充実を後押ししている。東日本大震災から来年3月で15年を迎え、小中高生の多くが震災後に生まれた世代となる中、当時の教訓を踏まえた「命を守れる人」としての成長や、地元で生きる大切さなどの理解普及を見据える。(佐藤 壮)
同プラットフォームは、震災後に設立され、まちづくり会社である㈱キャッセン大船渡を中心に、津波復興拠点整備区域である大船渡駅周辺地区に立地する事業者や市で構成している。
同エリアを中心に体験できる「あの日」は、スマートフォンから東日本大震災の経験を伝える音声が流れ、高台への迅速な避難など「生きる知恵」を学べる仕組み。令和3年に公開し、東北大学災害科学国際研究所の柴山明寛准教授が共同開発・監修を担う。
地元住民・事業者の経験を基にした「避難行動」に焦点を当て、音声などの拡張現実(AR)を通じて、震災の疑似体験に没入できる。教育旅行などでの利用が広がり、4年度は485人、5年度は437人、6年度は594人を受け入れ、本年度は防災功労者内閣総理大臣表彰も受けた。
現在は10人以上から有償で実施。一方、市内の小学校高学年、中学生、高校生に関しては「市内の次世代を担う全員が、どこかのタイミングで防災教育に取り組み『命を守れる人』という伝承者になってもらおう」との思いから、無料対応を行っている。
13日と14日には、大船渡中学校(和賀真樹校長、生徒184人)の3年生約60人がキャッセン大船渡を訪れ、プログラム体験を通じて、津波発生から高台に逃げる行動を実践した。各地に設けられたポイントで、グループごとに渡されたスマートフォンをかざすと避難行動に関する問いかけがあり、震災時の避難者が抱いた〝葛藤〟に触れた。
キャッセンに戻ると、プログラムの普及活動を担う地域おこし協力隊の今野響さん(23)が解説。「生き残る人たちがいたからこそ、今のキャッセン大船渡というまちができている。生き残ることができなければ、新たなまちをつくることはできない。『もしも』のことがあっても、生きてほしい」と語りかけた。
13日の体験では、震災当時旧大船渡中の1年生で、発災当日は校舎内にいた大船渡消防署の橋本陸さん(27)が講演。自身の経験を語りながら、自分の身を守る「セルフレスキュー」の大切さを訴えた。
発災当時、0歳だった生徒たちは、終始真剣な表情で耳を傾けた。体験を終えた八木理叶さんは「災害時にどういった行動が必要か、どのように行動するかを考えるきっかけになったし、震災当時の人々の思いも知ることができた」と話していた。
今後も随時、市内小中高生の団体の無償体験に対応する。問い合わせはキャッセン大船渡(℡22・7910)へ。






