基本方針確認し情報共有 県が釜石でクマ対策支援会議 沿岸9市町村を対象に
令和7年11月15日付 1面
県沿岸広域振興局保健福祉環境部による「沿岸地域ツキノワグマ対策支援会議」は13日、釜石市の釜石地区合同庁舎で開かれた。県内各地でクマが出没し、人身被害も相次いでいる中、出席者らは県が策定した「ツキノワグマ対策基本方針」を確認し、人里での出没防止策や緊急銃猟の事例、各自治体の現状と課題などを共有した。
同会議は、気仙3市町を含む同振興局管内の9市町村を対象に、県の基本方針に沿ったクマ対策の促進と、緊急銃猟の体制整備などを支援しようと開催。オンラインも併用し、同振興局の小國大作局長をはじめ、各市町村や県の担当職員ら約20人が参加した。
小國局長は「現場での課題などを改めて共有し、地域全体での対応力を強化していく契機としたい」とあいさつ。講演・情報提供に移った。
はじめに、同部環境衛生課の髙橋秀彰課長が県の取り組み状況を紹介。危険鳥獣の管理施策における考え方、基本方針の概要などを解説した。
基本方針は、人の生活圏におけるクマの出没が相次ぎ、県民の命を脅かす状況が現実的となっている中で、総合的な対策の推進・強化を図ろうと策定。▽人の生活圏への出没防止▽出没時の緊急対応▽クマ類個体群管理の強化▽人材の育成・確保▽対策の実効性を高める体制の整備等──の五つの柱を掲げている。
髙橋課長は、「ツキノワグマは、餌を求めて人里に出没する。出没を繰り返すことで有害性が高くなる個体は、捕獲をする必要がある」として、個体数管理における捕獲の重要性を強調。捕獲や被害駆除、生息環境管理などの取り組みに活用できる「鳥獣被害防止総合対策交付金」をはじめとした国、県の支援制度を示した。
続いて、大槌町地域おこし協力隊の福島良樹さんが「岩手県大槌町での『協働型』緩衝帯整備」と題し、交付税を活用したクマ対策を説明。地元の特定地域づくり事業協同組合と、土木事業者、林業NPO法人、シルバー人材センターが協働し、生活圏に接した管理放棄地の整備、放任果樹の伐採を行っている事例を挙げた。
福島さんは、「学校や保育園に近い場所から整備を行い、やぶがなくなることでクマの存在に気づきやすくなった」などと述べ、緩衝帯整備によってクマの出没件数が減少傾向にあることにも言及した。
最後は、「緊急銃猟制度の実務について」として、東北野生動物保護管理センター代表の宇野壮春さんが情報を提供。鳥獣保護管理法の改正で9月から人の日常生活圏での銃猟が可能になった中、10月に全国で初めて宮城県仙台市で行われた緊急銃猟の経験を振り返った。
後半の意見交換は非公開で行われた。県によると、クマの生態などの質問があり、緊急銃猟、緩衝帯整備の事例に高い関心が寄せられたという。
主催した同部の菊池恭志部長は「地域ごとにツキノワグマ対策の進捗状況、課題は違ってくる。地域に合わせた対応を進めてもらい、県としても支援をしていきたい」と話していた。






