「あわび王国大船渡」発信へ 地元外の認知向上に力点 大船渡商議所 復興庁事業活用で産学官連携

▲ 大船渡のアワビに関する魅力をまとめた台湾語のリーフレットを作成

 大船渡市の大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)は本年度、「『あわび王国大船渡』情報発信事業」の一環で、市内のアワビ関連事業者の魅力を国内外に広める取り組みに力を入れている。復興庁の「新ハンズオン支援事業」を活用し、貴重な高級食材であるアワビの多彩な産業が市内にある誇りを醸成しながら、台湾の観光イベント向けにリーフレットを作成するなど、海外向けの発信事業を展開。産学官の連携による幅広い観点で認知度向上を目指すことにしている。(佐藤 壮)

 

 商議所は昨年度から、復興庁の「新ハンズオン支援事業」を活用し、大船渡市内で漁獲、加工されるアワビに着目した地域活性化事業を展開してきた。アワビ関連事業を主力とする三陸町越喜来の㈲田村蓄養場三陸営業所、綾里の元正榮北日本水産㈱と野村海産㈱の各技術力を地域資源として効果的に活用しながら、産業の活性化や交流人口拡大を目指している。
 エゾアワビは岩手県が全国一の漁獲量となっている半面、量は減少傾向にある。磯焼けに起因される餌不足や漁業者の高齢化、担い手不足が指摘される。一方、市内では、育成から漁獲、加工、調理と幅広い産業がそろう強みがあり、地域資源としての価値が高まっている。
 昨年度は『鮑=大船渡』というブランディング確立に向け、歴史的・文化的な側面からの明文化に着手。中華料理の中でも明治期から吉浜産は「キッピン」として知られ、高いブランド力を誇ってきた中、吉浜出身の水上助三郎、伊藤菊之助らに光を当て、資源保護や干鮑製法確立の足跡を探った。地元事業所が強みとする技術力、江戸時代にかけての俵物三品としての流通といった内容を取りまとめた冊子などを製作した。
 本年度は、地元外への情報発信を意識した取り組みを進める。漁獲や加工、販売など多彩な産業が営まれている特長を「あわび王国大船渡」と称し、昨年度の実績も生かした活動を展開する。
 12月6日(土)と7日(日)に台湾で開催される旅行博「日本東北遊楽日」に合わせ、新たにリーフレットを作成。アワビ漁、文化庁の100年フードに認定された「としるの貝がら焼き」のレシピ、アワビ商品や料理を取り扱う店舗情報などを、台湾語で紹介する。
 今年2月の大規模林野火災では、元正榮北日本水産の養殖施設が被災。約250万個の養殖アワビが死滅し、約5億円の被害となったほか、数年は養殖アワビ成貝の安定した出荷が難しい状況となった。こうした中でも、早期復旧・復興を後押ししようと、リーフレットでは林野火災に関する学びも織り交ぜた施設見学や、稚貝の貝殻を生かした制作体験も案内する。
 今後は、英語版の冊子作成も見据える。SNSによる情報発信にも力を入れる。
 エゾアワビを活用した地域活性化事業では、田村蓄養場三陸営業所と野村海産が手がけるアワビ、加工品の活用を主軸とする。大船渡飲食店組合と連携した講習会も開催する。
 県立大船渡東高校の食物文化科で食のchallengeコースに所属する3年生は、両事業所の商品を生かした「あわび焼きそば」を考案し、先月には盛岡市・盛岡材木町よ市での販売・調理が好評を博した。来月下旬には、大船渡市内でのイベントに合わせて「としるの貝がら焼き」「としる醤油の焼きおにぎり」の提供を計画している。
 本年度の事業には、県や市も参画。産学官が連携し、互いの強みを生かしながら多方面での周知PRを進めることにしている。