甦った美術品21点公開 市立博物館 被災後修復された絵画など(別写真あり)
令和7年11月16日付 1面
陸前高田市高田町の市立博物館(菅野義則館長)で15日、東日本大震災で被災後に修復された美術品の特別公開「甦った絵画たち─陸前高田へ帰郷─」が始まった。展示されているのは、昭和20年代から平成にかけて制作された絵画や工芸品合わせて21点。津波被害を受けながらも県内外の専門機関の連携により修復され返ってきた軌跡とともに、気仙地域を愛した作者らの思いも伝えている。12月14日(日)まで。
平成23年の震災で多くの歴史、文化的資料が津波被害を受けた同市。文化庁からの要請で文化財レスキュー活動が展開され、回収した文化財の修復作業が進められた。
美術品は約700点回収され、汚泥やカビの除去、脱塩、安定化処理など、世界的にも前例のない補修作業が展開された。本年度末までにすべての作品が同市に返還される見込み。
今回の特別公開は、作品を一時保管してきた盛岡市の県立美術館と、東海新報社が協力。昨年10月から今年4月にかけて同館で開かれたコレクション展「救出された絵画たち─陸前高田へ、まもなく帰郷─」で展示された作品を中心に、絵画20点と工芸品1点をセレクトし、それぞれの解説板や修復作業にかかる説明パネルも展示した。
展示室には、陸前高田市で芸術文化活動振興事業「カルチャービレッジ構想」を提唱した猪熊弦一郎氏や、そのきっかけをつくった行木正義氏、アートアカデミー「彩光会」の初代会長・柳下彰平氏ら、気仙の美術文化の礎を築いた画家たちの貴重な遺作が並んだ。初日の午前は、市内外からの多くの来場者が鑑賞し、各作品に残る震災の爪痕や、爪痕が分からないほどまでに修復された技術にも目を向けた。
矢巾町から訪れた高橋淳一さん(63)は、油彩画『冬の松原』を眺め、「子どもと海水浴でよく訪れた震災前の高田松原の絵がとても懐かしい。絵画ならではの表現が目を引き、素晴らしい展示を見ることができた」と深く印象に残った様子だった。
同博物館では「県内、全国の方々からのご支援により修復を終え〝帰郷〟した各作品。甦った作品が再び多くの皆さまに愛されてほしい」と願う。
観覧無料。月曜休館。問い合わせは同館(℡54・4224)へ。
公開作品次の通り。カッコ内は作者。
『猫と頭』(猪熊弦一郎)、『顔・唄(顔ファミリーより)』(同)、『Rue du President Wilson プレジデントウィルソン通り』(行木正義)、『椿島』(白石隆一)、『漁村の朝』(柳下彰平)、『冬の松原』(吉田啓一)、『風景「列」』(松田松雄)
『踊る(Ⅱ)』(吉田郁也)、『朝来』(同)、『ゴルフライブラリー挿絵原画』(同)※計8点、『ころがしぶち』(船渡重蔵)、『100の円窓による地のシリーズ』(加地保夫)、『初秋(海光る)』(菊池満)、『豊』(西大由)






