大船渡東・食文は12年度に 募集停止時期を見直し 県教委が県立高校再編計画修正案公表 高田・海洋は10年度で変わらず
令和7年11月18日付 1面
県教育委員会は17日、令和8年度から17年度までの10年間を期間とする「第3期県立高等学校再編計画」の修正案を公表した。このうち、当初案で再編対象となった大船渡東・食物文化科(定員40人)は募集停止時期を10年度から2年先送りし、12年度に変更。一方、同科と同じ10年度で募集を取りやめる計画の高田・海洋システム科(同)は、当初案のままとした。当初案公表後、気仙では両科の存続を求める官民の要望運動などが活発化している中、来年2月に公表が予定される最終案を見据えた今後の動向が注視される。(三浦佳恵)
修正案によると、第3期再編計画の▽全体方針(基本的な考え方)▽学校・学級の規模▽学級数の増減、募集停止に関する規則・基準──などは、8月に公表された当初案から変更がなかった。
当初案では、8~12年度の前期計画期間における具体的な再編計画が示された。気仙では、入学者数の減少や専門教員の確保が難しいことなどを理由に、高田・海洋システム科と大船渡東・食物文化科を10年度に募集停止とする方向性を提案。海洋システム科と食物文化科の調理師養成施設機能は宮古水産に集約し、同科の家庭の学びは東高の農芸科学で維持するとしていた。
修正案では、食物文化科の募集停止時期を2年延ばし、12年度に変更。ただし、集約先や家庭の学びを農芸科学科に残す考えは当初案のままとした。海洋システム科は当初案と同様、10年度に募集を取りやめ、宮古水産に集約する。
この理由について、県教委は集約先となる宮古水産・宮古商工の校舎一体整備の時期が9年度から10年度に延びたとしたうえで、「宮古水産の受け入れ体制の観点から、水産の学びと調理師養成施設の集約時期を分散することが適当と判断した」と説明。地域バランスを考慮し、10年度は高田・海洋システム科と久慈翔北の調理師養成施設を、12年度には大船渡東の調理師養成施設と久慈翔北の水産の学びを集約する考えだ。
また、食物文化科については、家庭の学びを農芸科学科で維持するため、教育課程の検討期間を確保することも理由に挙げている。
海洋システム科と食物文化科の再編計画を巡っては、当初案公表後、地元の陸前高田市、大船渡市を中心に存続を求める動きが活発化している。
気仙3市町と釜石市、大槌町からなる沿岸南部地区の5市町は10月、県教委に対して両科の存続と同地区に医療人材育成(医学部等進学)コースの設置を求める要望書を提出。大船渡、陸前高田の両市議会も県教委などに意見書を出し、両科の存続を求めた。
大船渡市内の各種団体や市民有志からなる「大船渡東高校・食物文化科をみんなで護る会」(代表・米谷春夫大船渡商工会議所会頭)は、10月から同科の存続を求める署名活動を展開。今月5日には市内外から集めた署名1万4719筆を県知事と県教育長に提出し、現在も活動を続けている。
修正案の公表を受け、同市の渕上清市長は「官民一体となって存続を求める活動を積極的に進めた結果、食物文化科の募集停止時期を当初案から2年間延期する措置が盛り込まれた。一定の前進があったと受け止めている」とコメント。海洋システム科の募集停止には「誠に遺憾」と述べた。
陸前高田市の佐々木拓市長は「こちらの要望に歩み寄ってくれていないゼロ回答で、到底受け入れることはできない。サーモン養殖など、地域で新たな産業が生まれようとしている中で、高校の専門科が実質地域からなくなるという逆行したことが起ころうとしており、非常に残念」と語った。
県教委は修正案を踏まえ、県内各地で地域代表者らを対象とした地域検討会議と、住民向けの意見交換会を開催。沿岸南部地区では、いずれも12月15日(月)に予定する。この場で寄せられた意見などを踏まえ、来年2月には最終案を公表し、3月下旬から4月にかけての策定を見据える。






