「激」「大」広範囲に分布 大規模林野火災被害木 延焼区域全体の6割超に

 大船渡市大規模林野火災で延焼した森林被害を把握する県や市の現地調査で、先端まで黒く焦げている「激」と、延焼が2㍍を超える「大」の区域が、被災森林全体の計6割を超えることが分かった。出火直後に激しく燃えた綾里の八ケ森付近にとどまらず、三陸鉄道よりも北側を含めて広範囲に分布。樹種別では、スギの被災が目立つ。(佐藤 壮)

               
 被害木の状況は、18日に開催された市林地再生対策協議会で示された。被害状況図(一部加工)、区分別の割合は別掲の通り。
 調査は、5月8日~10月21日に実施。現地での活動は、林野庁三陸中部森林管理署と、気仙地方森林組合が共同で行った。
 衛星画像データを活用し、被害状況を解析。データのみでは確認が難しい区域に関しては、現地調査を行った。
 調査では、先端まで黒く焦げている場合は「激」、根元から2㍍を超える延焼は「大」、2㍍以下は「中」、地表から30㌢程度は「小」としている。「大」は根元部分からの一般的な製材利用は難しいと言われるほか、幹の表面が360度焦げた場合は、水分が木全体に行き渡るのが難しくなり、枯れることが多いため「中」「小」も今後の生育を注視する必要があるとされる。
 最も多い判定は「大」で、被災森林面積の4割を超えるほか、「激」も約2割となった。「激」の判定となった樹木は、スギが多いという。
 県沿岸広域振興局農林部の菊池伸裕技術特命参事は「激しく燃えた地域が広範囲に分散・点在している。樹冠火が発生したところでは飛び火もあったと考えられるが、風向きや気象条件を含め、どういった原因かまでは解析できていない」と話す。
 市農林課では、森林所有者からの被害判定に関する問い合わせには、個別に応じることにしている。
 森林被害額は59億3922万円に上る。森林保険法に基づく森林保険制度の保険金額を基準とし、樹種や林齢別に設定された単価を用いて算定した。面積を見ると、人工林が全体の53%を占め、被害額は9割超に上る54億3000万円。人工林1㌶当たりの被害額は304万円となる。
 大規模林野火災の出火時刻は不明だが、消防覚知時刻は2月26日午後1時2分。7月に示された消防庁長官の火災原因報告書では、降水量が少なく林野内の可燃物が乾燥し、局地的な風やリアス海岸の複雑な地形も影響して広範囲に至った延焼状況を取りまとめている。
 火点は合足漁港付近で、強風を受け、火元から1・2㌔東に離れた八ヶ森方面に拡大した。広範囲に樹冠火を含む激しい燃焼が発生し、消防の覚知から約40分後には、火の粉を含む濃煙が立ち上った。
 濃煙はさらに東に流れ、八ヶ森から約2㌔離れた田浜地域で同2時前後には、少なくとも3件の飛び火が発生した。同3時ごろには、東西約7㌔の範囲にまで延焼が拡大した。
 出火日の最大瞬間風速は18㍍に及び、翌日の2月27日と4日目の3月1日も同程度の強風に見舞われた。2月28日には、南風が入ったことで綾里富士の南麓にまで到達していた火線が追い風を受けて斜面を焼け上がり、北方向に延焼範囲が広がったとしている。